2022 Fiscal Year Research-status Report
スルファチド類縁体の構造活性相関研究:新規作用機序インフルエンザ薬創製の基盤構築
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21K05297
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
八須 匡和 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 特別講師 (60587442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザ / スルファチド / 糖鎖 / 有機合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
スルファチド (3-O-硫酸化ガラクトシルセラミド) は、生体内に普遍的に存在する糖脂質であり、インフルエンザ感染時にウイルスの産生を促進させている。この働きはスルファチドとウイルスタンパク質であるヘマグルチニン (HA) の相互作用に起因する。本研究ではこの相互作用に着目し、アニオン原子団である硫酸基を鍵とした種々のスルファチド類縁体を化学合成し、これまで不明確であったスルファチドとHA間の構造活性相関を調査し、その作用メカニズムについて分子レベルでの理解を目指す。同時に、スルファチドとHAの結合を阻害する類縁体について、既存薬とは異なる作用機序をもった新規インフルエンザウイルス増殖阻害剤として応用する基盤を構築する。 本年度はアグリコンをトリメチルシリルエチル基とした天然型および3位リン酸型のスルファチド類縁体のスケールアップ合成および3位デオキシ型類縁体の合成に着手した。出発原料のメチル α-D-ガラクトピラノシドに対して、スズアセタールを介したベンジル化を行い、3位のみをベンジルエーテル保護したガラクトース誘導体を得た。保護基を入れ替えた後に3位のヒドロキシ基をS-メチルキサンテートおよびチオカルボニルイミダゾレートに変換した。それぞれの化合物に対してラジカルによる還元を行った結果、S-メチルキサンテート誘導体からの3位デオキシ化誘導体の収率が良好であった。得られたデオキシ化誘導体に対してアセトリスを行い、テトラアセタート体へと変換した。現在はこの類縁体のアグリコンをトリメチルシリルエタノールとするための合成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から引き続き、研究環境の変化によって実験機器類等の利用を制限せざるを得なかった。更に化合物精製の要である研究設備に重大な故障が生じ、年度内に予定していた化合物の合成を完了できなかった。このとから本年度の達成度を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
スルファチド3位デオキシ型誘導体の合成を完了した後に、カルボン酸型誘導体の合成に着手する。カルボン酸型誘導体はデオキシ型誘導体と共通の中間体を利用する。次にガラクトースの3位ケト体を合成し、スルホン酸型およびホスホン酸型類縁体の合成へと展開し、化合物ライブラリーを揃え、生理活性を測定する。
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Causes of Carryover |
(理由) 中圧カラムクロマト装置の故障に関して、その修理に係る費用が不透明だったため、研究費の使用をなるべく控えながら研究活動を行った。それに伴い合成研究も計画通りに進行しなかったため、試薬やプレパックカラム等の消耗品に関する支出が少なかった。必要量の消耗品を都度購入しているため、次年度に繰り返すことが最良と判断した。 (使用計画) 次年度使用額は主に試薬やプレパックカラム、生化学実験に関する消耗品費として使用する計画である。
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