2021 Fiscal Year Research-status Report
様々な代謝経路活性の一細胞検出を可能とする新規蛍光イメージング戦略の開発
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21K05312
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内之宮 祥平 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10770498)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 代謝経路 / 蛍光プローブ / ケミカルバイオロジー / 生体直交的脱保護反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
代謝経路は複数の酵素からなる連続的な反応であり、生命活動を維持するために重要な役割を果たしている。また、がんなどの疾病では様々な代謝経路の活性が変化していることが報告されているため、代謝経路活性を測定する手法を開発することは疾病メカニズムの解明や創薬に重要である。本研究では、一細胞レベルでの解析に適した蛍光イメージング法に着目し、標的代謝経路の活性を検出可能な蛍光プローブの開発を目指す。ここで、一般的に蛍光プローブの開発では基質に直接蛍光色素を導入するため、基質選択性が高い代謝経路を検出可能な蛍光プローブの開発はほとんど達成されていない。この状況を打破するため、本研究では様々な代謝経路に適応可能な新しい蛍光イメージング戦略を提案する。具体的には生体直交的脱保護反応に着目し、フルオロ基部位を導入した基質とシリルエーテル保護基を有する蛍光色素を用いる。すなわち、基質が代謝されるとフッ化物イオンを放出し、続くシリルエーテル保護基の生体直交的脱保護反応によって蛍光Off/Onイメージングを行う戦略である。本手法を用いて、エネルギー生産経路の一つである脂肪酸β酸化と様々な生体分子合成の起点となる尿素回路を一細胞レベルで検出する。ここで、一般的にフッ化物イオンによるシリルエーテル保護基の脱保護反応は反応速度が低いことが課題である。そこで2021年度では反応速度の向上させたシリルエーテル保護基の探索を行った。様々な構造を検討した結果、一般的に用いられているTBS基よりも400倍フッ化ナトリウムとの応答性が高い、かつ細胞内で安定なシリルエーテル保護基を探索することに成功した。今後は本シリルエーテル保護基を用いた代謝経路の検出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、フッ化物イオンによるシリルエーテル保護基の脱保護反応を利用するが、一般的にはTBS基やTBDPS基などが用いられている。しかし、これらはフッ化物イオンとの反応性が低いことが問題である。2021年度ではこの問題を解決し、感度良く代謝経路を検出するためのシステムの開発を目指した。その結果、フッ化物イオンとの反応速度がTBS基よりも400倍高く、かつ細胞内でも安定な新規シリルエーテル保護基を見出すことに成功した。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年度で見出した反応性・安定性が高い新規シリルエーテル保護基を用いて細胞内での代謝経路の検出を目指す。まず代謝経路による反応に応答してフッ化物イオンを放出する基質を合成する。2022年度は脂肪酸を分解するβ酸化を標的とし、基質である脂肪酸にフッ素原子を導入する。続いて、シリルエーテル保護基を蛍光色素に導入する。これは水中での溶解性、細胞膜透過性、細胞内局在に着目しシリルエーテル保護基導入蛍光色素の構造を最適化する必要があり、β酸化はミトコンドリアで起こるため、ミトコンドリアに局在するカチオン性の蛍光色素またはミトコンドリア局在部位を導入した蛍光色素を合成する。これらを用いて、培養細胞でのβ酸化検出を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は生体直交的脱保護反応を可能とするシリルエーテル保護基を探索するため、様々な構造のシリルエーテル保護基の合成とin vitroでの反応性評価を中心に行った。そのため比較的費用を抑えることが可能であった。一方、2022年度は培養細胞系での代謝経路活性の検出を中心に行う予定のため、細胞培養や生理活性物質、蛍光イメージング用試薬などの購入に費用がかかることが懸念される。そこで2021年度の余剰予算を2022年度に使用する。
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