2021 Fiscal Year Research-status Report
血管新生因子をターゲットとした癌細胞特異的蛍光プローブの開発
Project/Area Number |
21K05315
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
幡野 明彦 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10333163)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 浩二 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80399807)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 血管新生 / チミジンホスホリラーゼ / ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ / 蛍光応答 / 園頭反応 / 診断薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,血管新生因子であるチミジンホスホリラーゼの酵素活性に応じて蛍光応答する診断薬を開発し,血管新生病(癌)の早期発見と病原部の可視化を行うことを目的としている。 2021年度は,チミジンホスホリラーゼの基質であるチミジンを化学的に変換することで,塩基部位が蛍光基になっている化合物の合成を2種類合成した。 一つは二環式のピロールピリミジンであり,5-ヨードデオキシウリジンとトリメチルシリルアセチレン(その他誘導体も)を園頭反応にてクロスカップリングを行った。次に,カップリング生成物のトリメチルシリル基を炭酸ナトリウムにて脱保護し,アルカリ性条件下で4位酸素原子と5位エチニル基を環化させることで,二環式のピロールピリミジンを合成した。本化合物はNMRにて構造を確認し,紫色の蛍光を示すことを蛍光分光光度計で確認した。 もう一つの化合物は,塩基部位としては全くの非天然塩基である,ナフトイミダゾールを二段階で有機合成した。ナフトイミダゾールをリボースの塩基部位に導入するために,酵素合成実験を行った。ナフトイミダゾールとチミジンをリン酸緩衝液(120 % DMSO)に溶解し,ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(PyNP)を加えて40℃に保ち,反応を実施した。その結果,ナフトイミダゾールは5時間で95%以上の反応転換率を示した。 チミジンホスホリラーゼより基質特異性が広い,ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼを用いて,ヌクレオシド構造の認識部位を調査した。塩基部位はピリミジン構造のみならず,ベンゾイミダオールも反応し,非天然ヌクレオシドを合成できることがわかった。また,リボース構造は5'位水酸基は必要なく,3'水酸基が基質認識に重要な働きをしていることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼは,ピリミジン塩基のみならず,プリン塩基も非天然ヌクレオシドに変換することができることがわかった。加えて,ベンゾイミダゾールの様なカップリング部位としてはイミダゾール構造が重要であることもわかった。
2)リボーズ部位の5'水酸基は3'水酸基より重要ではない。しかし,5'位に消光団を導入できるかどうか,現時点ではわからない。そのため,チミジンの 5'水酸基を変換し,アルキル基等を入れた化合物でも加リン酸分解が起こるかどうかを確認する。
3)塩基部位に蛍光団を有する非天然ヌクレオシドの合成を行った。現時点では,化合物が少ないため,バックアップ合成を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,有機合成と酵素変換を同時並行して進めて行きたい。 有機合成では,多環式化合物としてベンゼン環が直線にならんだようなイミダゾール化合物の合成を行い,現在,ベンゼン環が1次元に連なったアントラセン,屈曲してベンゼン環が繋がったフェナントレンをジアミン化し,イミダゾール構造に誘導するルートを取っている。その他,ペリレンなど,三次元にベンゼン環が拡張し,イミダゾール構造を有する化合物を合成し,ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼの反応基質になることを証明して行く。 合成された化合物は,核磁気共鳴装置,質量分析装置で構造を決定後,蛍光分光光度計にて励起波長と蛍光波長を確認する。このとき,多環式イミダゾール結合リボースと,遊離した多環式イミダゾールのみで,蛍光強度や蛍光消光(強弱の変化)が発生するかどうかをチェックする。 これらの基礎実験終了後,インビトロにて酵素,細胞による蛍光変化挙動を確認し,診断薬としての可能性を探る予定である。
|
Causes of Carryover |
試薬購入のために9000円ほど,次年度へ繰り越した。
|