2021 Fiscal Year Research-status Report
植物根の局所栄養応答を地上部から制御する分子機構の解明
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21K05324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 清志 京都大学, 生存圏研究所, 特定研究員 (20611297)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 栄養応答 / 不均一栄養環境 / 共発現ネットワーク / トランスクリプトーム / 屈性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は 17 種類の無機栄養元素のうち 14 種を土壌から吸収している。この14種を標的として、【地上部→根】の栄養応答制御がみられる栄養元素の特定を試みた。 根分けを併用した寒天栽培による実験系の確立を試みたが、分けた根を異なる栄養条件の寒天培地に安定してとどめることが困難であったことから、根分けを併用した水耕栽培の実験系の確立を目指した。 当初想定していた寒天培地の実験系とは異なり、水耕栽培の実験系のメリットとして、根を安定的に特定の水耕液にさらし続けることが容易である上に、水耕液の元素分析を行うことで根分けした植物根が各水耕液からどれだけの栄養を吸収したのか数値化できることからISP-MSを組み合わせた、より理想的な実験系を確立することができた。 この実験系を用い、改変したMS無機塩類を様々な濃度で含む水耕液を用意し根の大部分を浸し栽培すると、根分け水耕開始後、6日以内に地上部の栄養状態が水耕液の栄養濃度に応じて変動することが分かった。一方で、6日目あたりで地上部の生育にも条件間で有意に異なることから、サンプリング条件としては地上部生育量が同程度の3-4日目が適していることが分かった。 水耕液の大まかな栄養濃度条件を決定することができ、さらにリンが本研究の標的栄養として適していることを示唆する予備的な知見を得ることができた。 また、本研究の観察対象の一つである栄養屈性について、イネ主根における栄養屈性とそのリン栄養による応答性制御について、Plantsに論文が掲載された(Yamazaki et al., 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想以上に寒天での栽培条件の確立が困難であった。 また、水耕栽培系においても、根が吸収した栄養を評価可能な水耕液スケールを決定するための条件検討が煩雑になり、思うように実験系の早期確立ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに詳細な栽培条件の検討により、 本栽培系を栽培中に植物根に吸収されたリン栄養を再現よく評価できる系に仕上げることで、最終目的とするネットワーク解析に、根から吸収された栄養量を加える。 すなわち、 地上部栄養濃度、水耕液から収奪された栄養量、根の栄養濃度、地上部トランスクリプトーム、根のトランスクリプトーム、を統合解析により、地上部におけるどのような遺伝子群が地下部の遺伝子発現と相関を持ちうるか、を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の計画では今年度にRNA-sequensing解析のためにNGSを外注する予定であったが、実験系確立が遅れているため、次年度にNGSを外注することになった。そのため次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)