2021 Fiscal Year Research-status Report
栄養ストレス下の植物における膜脂質転換の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K05325
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下嶋 美恵 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90401562)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リン酸 / 窒素 / 炭素 / 脂質 / ストレス耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物はリン酸欠乏にさらされると、生体膜中のリン脂質の大半を分解し、糖脂質で代替することで、膜中のリンをより重要な生体内の代謝系に利用する。これは、植物のリン欠乏ストレス応答機構の1つであり、リン欠乏時の膜脂質転換と呼ばれている。これまでに申請者らの研究グループは、この膜脂質転換に寄与するリン脂質分解酵素(PAH)は、リンだけでなく窒素欠乏時の植物生育にも重要な役割を担っていること、また近年、生育環境中のリンだけでなく、窒素、炭素との量比が膜脂質転換の駆動に深く関与している可能性を見出した。そこで本研究では、特にリン脂質分解に寄与するPAHの活性発現制御に着目して、リン、窒素、炭素の3種類の元素の量比が膜脂質転換を駆動・制御する分子メカニズムを明らかにする。 1.シロイヌナズナを用いた各種栄養条件下での膜脂質転換活性化の解析 PAHと同様、リン欠乏時の膜脂質転換に寄与しているNPC5について、シロイヌナズナPAH1, PAH2, NPC5のトリプルノックアウト変異体をゲノム編集により作出した。リン酸欠乏時の生育において、PAH1, PAH2ダブルノックアウト変異体との差がみられなかったことから、NPC5のリン欠乏時の膜脂質転換への寄与は小さいことが明らかになったため、窒素、炭素を含めた栄養濃度バランスの変化が与える影響についても今後解析予定である。 2.栄養条件に応答したPAHタンパク質の量的変化および細胞内局在の解析 シロイヌナズナ野生株にPAH2タンパク質を蛍光タンパク質を付加して発現させた形質転換体を作出した。生化学的解析により、PAH2タンパク質は葉緑体の表層に局在している可能性が高いこと、また少なくとも生育環境中のリン酸濃度はその局在に影響を与えないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜脂質転換を欠損したシロイヌナズナ変異体の作出、PAH2の細胞内局在解析について、当初の計画通り進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作出した変異体を用いた多重栄養ストレス下での生育比較、膜脂質転換活性化の有無について検証を行う。また、PAHの細胞内局在解析については、PAH1形質転換体も作出し、解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた網羅的遺伝子解析の外注だが、得られた各種植物体の種々の栄養条件下での生育比較検討を十分行った上で依頼する。そのため、次年度使用額として当該経費分が計上された。
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