2023 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌の生物的鉄酸化反応ー微好気性鉄酸化細菌の潜在的役割の評価
Project/Area Number |
21K05326
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60547016)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 鉄酸化菌 / 水田 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化菌(以下、鉄酸化菌)の分離菌株を用いた培養実験と室内での土壌培養実験を行い、水田土壌での鉄酸化菌の鉄酸化ポテンシャルを推定することを目指した。本年度は、水田由来鉄酸化菌Ferrigenium sp. NRt1株のゲノム解析を行うとともに細胞あたりの鉄酸化活性を測定し、昨年度までの土壌培養実験の結果と合わせて土壌中での鉄ポテンシャルを評価した。また、新たに土壌中の2価鉄を、水溶性、交換性、活性2価鉄に分けて測定し、鉄酸化菌がどの画分の鉄の酸化に関わるのか推定した。 NRt1株の鉄酸化活性は、NRt1株接種培養液および非接種培養液中の2価鉄減少量の差と培養液中の細胞数から推定した。また、土壌中の水溶性、交換性、活性2価鉄はそれぞれ水、1M KCl、pH 3.0酢酸バッファーにより抽出し、その量を評価した。 NRt1株の鉄酸化活性は、1細胞あたり約10^-15 mol/hであり、NRt1株の至適生育温度と対応して30℃で最も高かった。この鉄酸化活性の値と細胞の倍加時間、昨年度までの土壌培養実験での鉄酸化菌数の増加量を考慮して土壌中での鉄酸化菌の鉄酸化ポテンシャルを推定すると、土壌1gあたり最大0.03 mgの鉄を酸化すると見積もられた。今年度の土壌培養実験において水溶性、交換性、活性2価鉄を測定した結果、酢酸抽出(活性2価鉄)画分が最も割合が多かったが、交換性画分や水溶性画分も検出された。NRt1株のゲノム解析では、NRt1株は水溶性2価鉄(フリーの2価鉄イオン)を酸化する酵素を有することが推定された。 以上の結果を統合すると、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌は、水田土壌が落水され、土壌が酸化的な環境に変化すると水溶性2価鉄を酸化して活発に増殖することが示唆された。
|
-
-
-
[Presentation] 田畑輪換が水田土壌の微生物群集に及ぼす影響:11年間にわたる動態解析(2)2023
Author(s)
渡邉健史, 小島久恵, 松葉悠真, 伊藤舞香, Joseph Sawadogo Benewinde, Mohammad Saiful Alam, 劉冬艶, 海野裕晃, 村瀬潤, 土屋一成, 浪川茉莉, 髙本慧, 戸上和樹, 高橋智紀, 西田瑞彦, 浅川晋
Organizer
日本土壌肥料学会2023年度愛媛大会
-
-