2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05335
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
下田 宜司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (80415455)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 根粒共生 / 窒素固定 / マメ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)窒素固定に異常をきたすミヤコグサsym102変異体の原因遺伝子と考えられるプロテアーゼ遺伝子を用いた機能性相補試験を実施した。相補試験には、比較対象としてシロイヌナズナのオルソログ遺伝子も使用して実施した。その結果、変異体に空ベクターを導入した場合には根粒の窒素固定不全表現型は相補されなかったが、ミヤコグサおよびシロイヌナズナのオルソログ遺伝子を導入した場合には、いずれの場合も窒素固定活性が確認された。このことから、当該プロテアーゼ遺伝子がsym102変異体の原因遺伝子であり、シロイヌナズナのオルソログと同様の機能を持つことが明らかとなった。また酵母や大腸菌のオルソログタンパクの情報を利用して、プロテアーゼ活性を無くすような変異を導入したSYM102遺伝子を作成し、相補試験を実施たところ、窒素固定活性の回復は認められなかったことから、プロテアーゼの活性はSYM102の機能に必須であることが確認された。 (2)sym102変異体の窒素固定不全の原因を明らかにするため、根粒の生理状態の解析を行った。本年度は根粒における活性酸素種(H2O2, O2-)の発生を調べた。根粒菌を接種して7日目、10日目、21日目の根粒における活性酸素種の発生を染色法により調べた結果、H2O2の発生は、野生型と変異体で大きな違いは認められなかった。一方、O2-については、21日目の根粒において、野生型よりもsym102変異体の方が発生量が多い傾向が見られた。しかしながら、sym102変異体の窒素固定不全表現型は、根粒菌接種後10~14日目には現れることから、21日目の根粒でみられたO2-の発生量の違いが窒素固定不全の直接の原因ではないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異体の相補試験により、原因遺伝子の確定とシロイヌナズナのオルソログ遺伝子と同等の機能を持つことが確認できた。また根粒の生理状態の解析では、窒素固定不全の直接の原因を明らかにすることはできなかったが、可能性の1つを排除できたという点では進展したと言える。以上の事から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
sym102変異体の窒素固定不全の原因を明らかにするため、引き続き根粒の生理状態の解析を進める。また今年度実施した相補試験の結果から、シロイヌナズナのオルソログ遺伝子と同等の機能を持つことが明らかとなったことから、シロイヌナズナの先行研究等を参考にし、SYM102の細胞内局在や遺伝子機能解析を実施する。
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Causes of Carryover |
今年度、変異体の根粒の生理状態の解析のための分析キットの購入を予定していたが、キットの分析感度や使用する機器に関する情報の収集に時間を要し、キットの選定と購入を次年度に行うことにしたため。
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