2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌の新規 yafD-yafE TA system の機能同定
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21K05347
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 良弘 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00737009)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Toxin-antitoxin system / RNA polymerase / suppresor mutant |
Outline of Annual Research Achievements |
新規 TA system として YafD-YafE を同定し、YafD toxin はRNA ポリメラーゼ活性を阻害することが示唆されている。本研究では、(1) YafD toxin の標的を同定、(2) YafD の標的に対する作用機構、(3) YafE antitoxin によるYafD 毒性中和機構、及び (4) yafD-yafEの生理的役割の解明を目的として実験を行っている。 今年度は、YafD の標的を同定するためにYafD の発現及び精製を行なった。Myxococcus xanthus 由来の Protein S を可溶化タグとして利用し、融合タンパク質 (PrS-YafD) として発現させた。PrS-YafD は可用性タンパク質として高発現され、菌体生育も YafD 発現後と同程度阻害された。よって、PrS タグは YafD の機能に影響しないことが示された。PrS-YafD タンパク質は Ni-NTA カラムを用いて精製し、ゲルろかカラムクロマトグラフィーを用いて解析した結果、PrS-YafD は可溶性凝集体を形成していることが明らかとなった。そこで、ProteinS 以外の可溶化タグとしてMBPおよびGSTを用いたが、これらのタグを融合した YafD は発現後沈殿画分に検出された。よって、生理的な構造を有する YafD を生成することはできなかった。 そこで、YafD の標的を同定するために YafD による生育阻害を中和する suppressor gene の探索を行った。pUC19 プラスミドを用いて大腸菌のゲノムDNAライブラリーを作成し、探索した結果、異なる2つの領域が見出された。これらの領域には RNA ポリメラーゼ構成因子である RpoZ が含まれていた。現在、suppressor gene を同定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、PrS-YafD を精製し、精製タンパク質を用いてRNA 合成への影響および toxin の毒性を中和する antitoxin との相互作用を解析する予定であった。予備実験段階では、PrS-YafD 融合タンパク質は大腸菌内で可溶性タンパク質として高発現されたことから、問題はないと思われた。しかし、実際に精製して解析をした結果、予想外にPrS-YafD は可溶体だが凝集している可溶性凝集体を形成していることが明らかとなった。PrS 以外の可溶化タグではYafD は沈殿画分に検出された。よって、当初の計画を大幅に変更する必要があった。しかし、変更後の実験によって YafD の標的と思われる遺伝子を絞り込めているため、評価をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、得られた2つの領域に存在するどの遺伝子が YafD の生育阻害を中和する suppressor gene なのかを同定していく。同定された遺伝子の機能を基に YafD の作用機構を解明していく。また、YafD の可溶化条件も引き続き探索するとともに、必要な場合は変性剤を用いて denature-renature を行うことで YafD 精製標品を取得し、in vitro での解析を可能にしたい。 YafE による YafD の毒性の中和機構の解析については、YafD-YafE を共発現させることで、YafD-YafE complex を可溶化タンパク質として生成できるのではないかと考えている。精製できればゲルろ過クロマトグラフィーにより YafE 及び YafD-YafE 混合体を解析し、YafD-YafE 複合体を調べる。 また、ストレス環境下における YafD の役割を解析するために、yafDyafE 欠損株を作成し、熱ストレスとして 60 度での熱処理、酸化ストレスとして過酸化水素処理、エタノール添加後の生育、形態変化、および生菌数を測定する。同じ実験を野生株でも行い、yafDyafE TA system の役割を探索する。
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Causes of Carryover |
本年度はコロニーカウンターの購入を予定していたが、研究計画の大幅な見直した。また、他の機器(オートクレーブ)の修理が緊急で必要になったため、予算の使用計画を変更した。また、コロナウイルスの影響で、予定していた学会への参加を取りやめた。そのため経費に余剰が出た。翌年度に関しては、研究計画に則り、予算を使用していく。来年度に持ち越した分に関しては、すでに解析に必要な機器(超音波破砕機)が故障しているため、その修理に使用する予定である。
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