2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of significance and regulatory mechanism of glucose-mediated protein Arg-phosphorylation of glucose-metabolizing enzymes
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21K05349
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小倉 光雄 東海大学, 海洋研究所, 教授 (80204163)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マンガンイオン / イオン輸送 / 遺伝子発現制御 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、転写因子AhrCによって制御されるMnインポーターYcsGをコードする遺伝子を同定した。ycsGの発現はMntRによっても制御されている事を確認した。YcsGは7つのORFからなるオペロンに存在する。このオペロン内の2つの遺伝子は1997年に、胞子形成の制御遺伝子kipIと、このオペロンの発現を抑制する転写因子kipRとして同定され、オペロンの発現はグルコースによって誘導され、転写因子TnrAによってさらに活性化されることも判明した。さらにゲノムワイド解析により、グローバルな窒素代謝制御因子TnrAによるこのオペロンの制御も判明した。しかし2017年に、kipIを含むこのオペロンに含まれる3つの遺伝子が、グルタミン酸代謝に関与する5-オキソプロリナーゼのサブユニットであることが示されたが、ycsGの機能はまだ不明だった。本研究で、このオペロンのプロモーターPpxpAのMn添加による誘導が観察された。Mn依存的な誘導を種々の変異株を用いて発現解析し、Mn誘導の原因となる転写因子としてKipRを同定した。結果として、PpxpAのMn応答は、MntR、TnrA、KipRによって媒介されることが判明した。TnrA依存的なMn応答は他のグループにより報告されていて、そのメカニズムは以下のように推察されている。TnrAはグルタミンによってフィードバック阻害されたグルタミン合成酵素と結合し、その結果TnrAを阻害する。 グルタミン合成酵素のMn型はMg型よりもグルタミンによる阻害に強く、その結果TnrA活性の阻害が少ない。枯草菌のKipRの特性はよくわかっていないが、Thermotoga maritimaのKipRホモログの結晶構造から亜鉛の結合が明らかになった。枯草菌KipRの金属結合の可能性は、KipRによるMn依存的なオペロン制御に関係しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の目標であったYcsGを含むオペロンの発現制御とMnイオン応答性について、ある程度の進捗を見ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
そもそも、本研究の目的におけるグルコース誘導は、カタボライト制御のマスター遺伝子CcpAに依存せず、最近まで機能が不明であったylxR遺伝子を含むものであった。報告者は、YlxRの非特異的なDNA結合を観察し、いわゆるNucleoid-associated proteinとしてYlxRが遺伝子発現を制御する事を想定していた。最近、ドイツのグループがYlxRはtRNAの成熟化に必要な核酸分解酵素RNasePにタンパク質相互作用を通じて結合し、その活性を負に制御している事を報告した。そこで、YlxRの遺伝子発現制御メカニズムにRNasePが関係しているかどうかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
研究の予想外の進展により、実験計画を見直したため、当初の予算執行計画に変更が生じた。新たに計画したグローバルな遺伝子発現制御解析のためにRNA-seqを行うので、主にその費用に充てる。
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