2022 Fiscal Year Research-status Report
放射線抵抗性細菌のDNA損傷認知に基づくPprI依存的DNA損傷応答機構の解明
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21K05356
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 勝也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (90370402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA修復機構 / PprIタンパク質 / Mn輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスのDNA損傷応答機構において、PprIタンパク質は、DNA損傷に関係なく構成的な発現をしていることから、DNA損傷時に、PprIタンパク質を活性化する機構の存在が示唆される。PprIタンパク質は活性中心にMnを配位することでメタロプロテアーゼ活性を有する。そこで、PprIタンパク質の活性化に関連が示唆されるMnの細胞内への輸送及び細胞外への排出に関わるタンパク質をコードする遺伝子(DR1709及びDR2523)に着目し、これら遺伝子を破壊することで、DNA損傷応答機構への影響について解析を試みた。具体的には、DR1709及びDR2523遺伝子の上流及び下流の領域(800bp程度)をそれぞれPCR増幅した各DNA断片で、カナマイシン耐性遺伝子カセットを連結することで遺伝子破壊用DNA断片を作製した。得られたDNA断片を用いてラジオデュランスの野生株を形質転換し、2種のMn輸送欠損変異株を作製した。細胞内Mn蓄積量と増殖への影響を調査したところ、Mn輸送欠損によって、野生型よりも増殖に遅延がみられた。DR1709欠損変異株の増殖遅延は、細胞内へのMn輸送量の減少によると考えられた。一方、DR2523欠損変異株の増殖遅延は、細胞外へのMn排出の低下により細胞内Mn蓄積が過剰となり、増殖に遅延がみられたと考えられた。さらに、Mn輸送欠損株について、ガンマ線に対する感受性を測定した。その結果、2種のMn輸送欠損株はいずれも、野生型と比べて非常に感受性を示した。また、培地へのMn添加によって、野生株及びMn輸送欠損株いずれもガンマ線耐性の向上がみられた。しかし、野生株と2種のMn輸送欠損株との感受性の差異は大きく変わらなかった。このように、細胞内Mn蓄積量の変動によって、DNA損傷応答機構に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、PprIタンパク質の活性化に関連が示唆されるMnの輸送に関わる遺伝子群の欠損株の作製、及びDNA変異原に対する影響を評価するなど、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したMn輸送欠損変異株を用いて、DNA損傷後の細動内Mn蓄積量の変動、及びルシフェラーゼ遺伝子発現を指標としたレポーターアッセイを実施することで、PprIタンパク質の活性化に与える影響について解析し、デイノコッカス・ラジオデュランスのPprIタンパク質依存的DNA損傷応答機構の全容解明に向けた研究を推進する。
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Causes of Carryover |
調達方法の工夫により経費が節約できたためであり、次年度の物品費購入に使用する。
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Research Products
(9 results)