2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K05359
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柘植 陽太 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (00647422)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖消費 / コリネ型細菌 / 代謝センサー / 中央代謝経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアミノ酸生産菌のコリネ型細菌において糖消費速度を感知するフラックスセンサーを探索することを目的としている。使用菌株として野生株ATCC 13032に加えて、単位菌体量当たりのグルコース消費速度が増加・低下する株としてH+-ATPase活性を低下させたatpG一塩基置換株とグルコースの取り込みとリン酸化に関わるホスホトランスフェラーゼシステムの遺伝子(ptsG)の欠損株を使用した。昨年度、これら3株の代謝解析を行った結果、細胞内濃度がグルコース消費速度と相関を示す代謝物として解糖系のホスホエノールピルビン酸とピルビン酸、TCAサイクルのイソクエン酸、フマル酸、コハク酸の5つが見出された。特にホスホエノールピルビン酸は負の相関、その一つ下流の代謝物であるピルビン酸は正の相関が見られたことから、ここに何らかの制御が関係している可能性が考えられた。 今年度は昨年度の結果を受けて、ホスホエノールピルビン酸の利用とピルビン酸の蓄積を促進するためにピルビン酸キナーゼ遺伝子(pyk)の高発現の実験を行った。pstG欠損株を親株に、pyk遺伝子のプロモーターを高発現プロモーターに置換した。その結果、有意差は見られなかったが、単位菌体量当たりの糖消費速度が16%増加した。以上の結果により、ホスホエノールピルビン酸とピルビン酸の細胞内濃度が糖消費速度と関係することが示唆された。 本研究の目的とは異なるが、昨年度に行った上記3株の転写解析のデータを詳細に解析した結果、グルコースの取り込みに関係するptsG遺伝子とiolT1, iolT2遺伝子の発現量が負の相関の関係にあることを見出した。そこでiolT1, iolT2遺伝子の発現が増加するイノシトールを添加して培養したところ、グルコース存在下でもptsG遺伝子の発現量が低下した。これらの結果から、膜タンパク質同士が転写レベルで互いの量を制御する新規機構の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通りに進展した。また本研究の目的ではないが、得られたデータから新規の制御機構の存在を示唆する結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はホスホエノールピルビン酸とピルビン酸の細胞内濃度の相関に着目し、ピルビン酸キナーゼ遺伝子(pyk)の高発現の実験を行った。その結果、有意差は見られなかったが、単位菌体量当たりの糖消費速度が16%増加した。この実験は親株としてptsG欠損株を使用しており、通常のホスホトランスフェラーゼシステムではないnon-PTSシステムによりグルコースを取り込む。そのため、グルコースの取り込みにボトルネックが生じた可能性がある。そこで、non-PTSシステムに関与するグルコーストランスポーターとグルコキナーゼ遺伝子を高発現することにより、pyk遺伝子高発現の効果がより顕著に見られるかを検証する必要がある。 また、転写解析から派生する形で見出されたptsGとiolT1, iolT2の発現関係については、iolT1, iolT2の二重欠損株と高発現株を作製し、ptsGの発現レベルを調べると共に、ptsGの高発現株でiolT1, iolT2遺伝子の発現が減少するかを検証する必要がある。予想通りの結果が得られたら、互いの発現を制御する転写因子を探索する。
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Causes of Carryover |
2024年1月の能登地震により使用機器が故障したため、次年度への研究期間の延長を申請した。当該助成金はRNAseq実験と学会発表のための旅費に使用する予定である。
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