2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism for regulation of fruiting body formation and secondary metabolism in entomopathogenic fungi
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21K05362
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
道羅 英夫 静岡大学, 理学部, 准教授 (10311705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サナギタケ / コルジセピン / ウスチロキシン / Beauveria bassiana / 比較ゲノム解析 / レトロトランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
サナギタケにおいて、veA遺伝子欠損株でコルジセピンの産生量が減少していることが明らかになっていたが、トランスクリプトーム解析により、コルジセピン生合成遺伝子クラスターの発現も低下していることが確認された。さらに興味深いことに、顕著に発現が低下している二次代謝産物生合成遺伝子クラスターが見い出され、マイコトキシンの1種であるウスチロキシン生合成遺伝子クラスターと相同性があることが明らかになった。ウスチロキシン生合成遺伝子クラスターは、これまで稲こうじ病菌Ustilaginoidea virensとAspergillus属からしか報告が無く、今回新たにサナギタケから発見され、その遺伝子発現はVeAタンパク質の制御を受けている可能性が示唆された。 Beauveria bassianaの子実体を形成する株としない株の比較ゲノム解析においては、当研究室で単離した子実体形成株4株のゲノムサイズは38.9~40.2 Mb(平均39.6 Mb)であるのに対し、子実体を形成しない株では34.6~36.7 Mb(平均35.4 Mb)であり、子実体形成株はゲノムサイズが約4.2 Mb大きいことが明らかになった。このゲノムサイズの違いとなっている要因を調べたところ、子実体形成株のリピート配列は6.4~7.17 Mb(平均6.86 Mb)であるのに対し、子実体を形成しない株では0.42~3.93 Mb(平均2.28 Mb)であり、ゲノムサイズの違いはリピート配列、特にLTR型レトロトランスポゾンの長さを反映していることが強く示唆された。子実体形成能の有無とレトロトランスポゾンの関連性については今のところ不明であるが、今後はレトロトランスポゾンによる子実体形成株のゲノム進化と子実体形成能の獲得について、新たな視点で解析を行う必要が出てきたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サナギタケのveA遺伝子欠損株でコルジセピンや新たに発見したウスチロキシン生合成遺伝子クラスターの遺伝子発現が低下していること、B. bassianaでは比較ゲノム解析によって、子実体形成能の有無によってゲノム中のレトロトランスポゾンの長さに大きな違いがあることなどを明らかにすることができ、研究自体は順調に進展しているが、サナギタケのveA遺伝子欠損株の比較ゲノム解析の論文を投稿したり、学会で発表したりするまでには至らなかったという点で遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
サナギタケのveA遺伝子欠損株で子実体が形成されないこと、コルジセピンやウスチロキシンの生合成遺伝子クラスターの遺伝子発現が低下していることが確認されたが、veA遺伝子は人為的に欠損させたものではないため、野生株と比較することができないという問題点がある。そこで、子実体を形成する相補的な交配型の株を用いてveA遺伝子破壊株を作成し、子実体形成能やコルジセピン、ウスチロキシンの生合成遺伝子クラスターの遺伝子発現量、コルジセピン、ウスチロキシンの産生量を野生株とveA遺伝子破壊株で比較して、子実体形成やこれらの二次代謝産物の生合成がveA遺伝子に制御されていることを直接的に証明する。
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