2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on the metabolic conversion of omega-3 polyunsaturated fatty acids through a reconsideration of beta-oxidation pathway
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21K05364
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 拓哉 京都大学, 化学研究所, 助教 (40756318)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高度不飽和脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / ドコサヘキサエン酸 / β酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に細菌は高度不飽和脂肪酸 (PUFA) をつくらないが、一部の海洋性細菌はエイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸 (DHA) といったω-3 PUFAを生産する。これらの細菌におけるPUFA生合成の理解は進んでいるが、一方で、分解や変換といった他の代謝経路については未解明な点が多い。PUFA生産菌の新しい産業利用価値を探るため、本研究ではEPA生産性細菌Shewanella livingstonensis Ac10に見出したDHA-EPA変換機構の解明に取り組んだ。我々はこれまでに、脂肪酸のβ酸化を担うFad酵素群がDHAからEPAへの変換に関わることを発見したが、Fad酵素がDHAを完全分解するのではなく、β酸化を1サイクルだけ進めEPAを生じる分子機序は未解明であった。可能性の1つとしてFad酵素とリン脂質合成酵素PlsC1の間の相互作用が重要であると仮定し、本年度はその分析に向けて準備を進めた。具体的には、Ac10ゲノムのplsC1にHisタグ、fadAにHAタグをコードする配列を付加した株を作製し、それらの生育や脂質生産が正常であることを確認した。現在、これらの株を用いた免疫沈降実験のための条件検討を進めている。これと並行して、大腸菌Escherichia coliを宿主とした相互作用分析に向けて、Fad酵素の発現系を作製した (PlsC1の発現系は過去に作製済)。今後、これを利用したプルダウン実験も進める。 また、有用物質生産系構築の一環として、Shewanella vesiculosa HM13のフラン脂肪酸 (FuFA) の遺伝子を取得し、組換え発現系を作製した。E. coliを用いて分析した結果、FuFAの生産は見られず、生合成中間体がわずかに蓄積していた。現在、変異導入によりFuFAの生産性向上が可能か検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産・育児への参加や学生数の減少のため本研究に従事する十分な時間を確保できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Ac10のFad酵素とPlsC1との相互作用を分析する。本年度に作製した各種株を利用して免疫沈降、プルダウン実験を計画しており、反応時間や架橋剤の添加といった反応条件を最適化して相互作用を検証する。FuFA生産系に関しては、FuFA合成酵素の基質認識が原因であると考えられるため、これに関わるアミノ酸残基を立体構造モデルから推定し変異導入することを計画している。また、Fu FA合成酵素のホモログである、E. coliのシクロプロパン脂肪酸合成酵素を改変してFuFA合成に利用することも計画している。
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Causes of Carryover |
令和5年度は出産・育児への参加や学生数減少のため本研究に従事する十分な時間が確保できず、令和6年度に実験の実施を延長した。令和6年度は前年度までに作製した各種菌株を用いてタンパク質間相互作用やFuFA合成遺伝子の分析を予定しており、これらの実験のための試薬・消耗品の購入費、および学会参加費・旅費に支出を計画している。
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