2023 Fiscal Year Annual Research Report
腸内共生細菌のべん毛が宿主免疫系の炎症誘導を免れる理由の分子レベルでの解明
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21K05369
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
梶川 揚申 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30646972)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 運動性 / べん毛 / 腸内細菌 / 免疫 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は主にLigilactobacillus agilisのべん毛における糖鎖修飾について調べた。L. agilisのゲノムに存在する運動性オペロンのべん毛繊維構成タンパク質「フラジェリン」遺伝子近傍において、7個の推定糖転移酵素遺伝子が見出された。これらの遺伝子の一部または全部がフラジェリンの糖鎖修飾に関与していると思われたことから、各遺伝子の欠損変異株構築を試み、これに成功した。各欠損変異株について表現性状を調べたところ、1株はべん毛を形成せず、2株はべん毛を形成するものの菌体同士が凝集し、運動性を失っていた。これら2株が産生するフラジェリンを調べたところ、分子量が低下しており、検出される糖鎖の量も大幅に減少していた。これらの結果より、少なくともこの2菌株において欠失している遺伝子はフラジェリンの糖鎖修飾に関わっていることが強く示唆された。また、べん毛結合糖鎖が大幅に減少することによって、べん毛繊維表面の親水性が低下すると考えられ、これが菌体同士の凝集の原因であると推察された。その他の推定糖転移酵素遺伝子は直接フラジェリン糖鎖修飾に関わらない、あるいは同じ機能をもつ遺伝子であると思われた。べん毛繊維の安定性評価については、べん毛繊維同士が凝集してしまう問題から、この解決を図る必要があり、今後引き続き検討を行っていく。 研究期間全体を通じた成果として、L. agilisが持つべん毛抗原の免疫学的活性が低い理由は特定のアミノ酸配列に起因することを証明できたことが挙げられる。また、上述の糖鎖修飾関連遺伝子の欠損株は、糖鎖修飾によるべん毛繊維の安定化がべん毛抗原の免疫学的活性の低さに寄与していることを証明するために不可欠な実験材料となった。
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