2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on molecular mechanisms of blastema formation and organ regeneration in a whole-body regeneration model of sea cucumber, Apostichopus japonicus.
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21K05378
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥山 優 静岡大学, 農学部, 教授 (60202206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 亨 静岡大学, 理学部, 講師 (20377716)
道羅 英夫 静岡大学, 理学部, 准教授 (10311705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マナマコ / 内臓放出 / 器官再生 / 横切断 / 組織学 / 再生芽 / RNA-seq / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
移植医療の限界を克服する技術として再生医療が脚光を浴びているが,立体的構造を持つ臓器の再生技術の確立には,さらなる器官形成・再生機構に関わる基礎的な知見の集積が必要である。本研究は高い再生能力を持つマナマコを研究対象とし,マナマコ特有の器官再生現象である「内臓の自切・放出からの再生」,さらには我々が確立した「内臓放出させたマナマコの横切断からの全身再生」の実験系を用いて,器官再生の形態学的・組織学的な経過の記載と,そこに関わる分子機構の探索を目的としている。 内臓放出からの再生,及び横切断後の再生共に再生芽・器官原基の形成が起こり,さらに再生器官の前後の位置情報の再生・再構築が起こる。これらに着目し,本プロジェクト初年度は①内臓放出からの再生(消化管再生)過程及び横切断後の切断面における再生芽形成過程の組織学的解析,並びに②横切断からの再生過程の網羅的遺伝子発現の解析を進めた。 ①では,消化管再生系にて,a.消化管及び腸間膜の切断端での細胞増殖と器官原基形成,及びそこからの消化管再生過程を形態学的・組織学的に観察した。また,b.消化管の前後軸の再生経過の解析に向けてHox遺伝子群の発現を解析し,消化管の前方・中央・後方でそれぞれマーカーとなり得るHox遺伝子を同定した。さらに,c.消化管再生過程における細胞系譜解析に向けて,内胚葉組織のマーカー遺伝子の同定も行った。加えてd.横切断後の後方切断体の切断面に生じる再生芽の組織学的解析を行い,体内側で上皮が肥厚する独特な再生芽構造を観察した。②では後方切断体での遺伝子発現解析を行い,e.哺乳類にて幹細胞マーカーとして知られているある遺伝子オルソログが,再生過程に発現変動することを発見した。 以上の結果は,今後の横切断からの再生機構解明の研究の基礎データとなり,また哺乳類の器官再生と共通する分子機構の存在を示唆する重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクト初年度は,「項目1. 再生芽形成,器官形成過程の組織学的解析」,及び「項目2. 網羅的遺伝子発現解析」を行うことを計画していた。この計画に従い研究を遂行し,以下のとおり概ね順調に進展している。 項目1では,内臓放出後の消化管再生過程,及び横切断後の切断面における再生芽形成過程を外部形態及び組織形態レベルで解析を進め,前者ではBrdUの取り込みによる細胞増殖パターンも合わせて解析を進め,再生経過ほぼ一通り観察した。また,細胞系譜解析にむけた各種細胞マーカーの探索も進め,消化管内腔上皮を認識できる内胚葉系マーカー(例:HNF3)を同定し,そのin situハイブリダイゼーションによる解析も進めた。その他,項目2で同定した幹細胞マーカーや,神経マーカー,生殖細胞マーカーについても同様に解析を進めた。また,後者の「横切断面の再生芽の組織学的解析」では,縦走筋や縦走神経の早期での入り込みの様子や,体内側での吸収上皮葉形態の上皮組織の肥厚の様子など,特有の再生芽形成過程を明らかにした。さらには,消化管再生における前後の正しい位置情報に基づいた組織形成や,横切断後の前後軸の位置情報の再構築の解析に向けて,Hox遺伝子の発現を解析したところ,消化管の前方・中央・後方でそれぞれ発現するHox遺伝子を同定した。今後,これらが再生タイミングでどのように前後の位置情報が再生・再構築されていくのかの良い指標になると考えられる。 項目2の網羅的遺伝子発現解析では,初年度は後方切断体の再生初期における遺伝子発現の変動を,RNA-seqにより解析した。その中で,哺乳類にて幹細胞マーカーとして知られている遺伝子オルソログ(哺乳類では2つのホモログ,マナマコでは4つのホモログ)が同定され,そのうちの一つが再生に応じて発現変動するという興味深い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1で得られた形態学的・組織学的解析結果を論文として報告し,マナマコ器官再生の基礎データとする。また現在解析を進めている各種細胞マーカーについては,抗体を作製してより効率的に解析を進めるシステムを構築する。そして,再生芽形成に関わる細胞の動態を明らかにするとともに,その後の器官形成についても解析を進める予定である。 項目2の網羅的遺伝子発現解析については,再生初期にて発現変動する多くの遺伝子が明らかになってきているが,その発現部位・発現細胞の解析には至っていない。再生芽部位に特化したRNA-seqを行うとともに,得られた遺伝子の組織学的な発現解析を進めていくとともに,抗体の作製・遺伝子機能解析に向けた強制発現系・ノックダウン系の確立を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの蔓延の状況を鑑み,参加を予定していた研究会が開催されなかったことと,論文投稿が遅れたため。令和4年度中に研究成果を論文として報告する予定である。
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Research Products
(1 results)