2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K05383
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
河田 美幸 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (10454498)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液胞 / アミノ酸 / トランスポーター / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母の液胞は細胞内の遊離アミノ酸を蓄積するアミノ酸貯蔵庫である。特に顕著な塩基性アミノ酸の蓄積に関しては、液胞膜タンパク質Vsb1が主要な役割を果たしている。分裂酵母におけるVsb1ホモログ(SPAC24H6.11c; vsb1+)はGFP融合タンパク質の液胞膜局在、およびその遺伝子破壊による液胞内塩基性アミノ酸量の減少より、液胞への塩基性アミノ酸蓄積に関与する遺伝子であることが示唆された。また出芽酵母Vsb1と同様に、推定第一膜貫通領域内に保存されたアスパラギン酸残基(D174)が活性に関わる重要アミノ酸残基であることが示唆された。Vsb1ホモログは真核微生物間で広く保存されており、Vsb1による液胞への塩基性アミノ酸蓄積は、これら生物種において重要な生理的役割を担っている可能性があることを学会にて報告した。 さらに、栄養豊富条件における液胞へのアミノ酸集積機構の解明と、液胞を起点とするアミノ酸応答シグナルの解明に向け、昨年度構築した標識化タグ挿入型Vsb1の改良及び相互作用因子同定のための実験系構築を試みた。液胞内塩基性アミノ酸含量への影響評価により、タグの両端にリンカーを付加することにより活性を部分的に保持した標識化タグ挿入型Vsb1が構築できたことから、これを使用してVsb1の相互作用因子を特定することとした。一方、中性アミノ酸とヒスチジンを液胞内に取り込むAvt1については標識化タグを付加しても機能低下は限定的であり、質量分析により相互作用因子候補を複数同定している。今後、特定された候補因子の遺伝子破壊株を作製し、液胞へのアミノ酸蓄積に及ぼす影響を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離液胞膜小胞を用いた塩基性アミノ酸輸送活性の検出系ではVsb1タンパク質の分解や他の液胞トランスポーターの影響が排除できず、Vsb1ホモログ間の活性比較は困難であることが分かった。基質特異性および親和性など生化学的性質を評価するために、現在、バキュロウイルスおよび、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成を利用したリポソーム再構成系の構築に着手している。 Vsb1の長いN末端/C末端親水性領域について、活性調節などに関与する相互作用タンパク質特定に向け、タグ前後にリンカーを挿入し部分的ではあるが活性を保持した標識化タグ挿入型Vsb1を構築している。これを使用し、相互作用タンパク質の標識および質量分析法による同定を行い、Vsb1の活性調節機構解明を進める予定である。 さらにVsb1親水性領域を解析する中で、N末端親水性領域を部分欠失したVsb1が液胞膜に局在し、塩基性アミノ酸輸送能も保持することが示唆されている。Vsb1親水性領域中の液胞膜局在もしくは液胞内塩基性アミノ酸蓄積に関わる領域の特定を進めており、立体構造も含めた検討を加えVsb1の活性調節や新規機能解明に向けた基盤情報を取得する。得られた知見は上述の標識化タグを用いて同定した相互作用タンパク質の機能解析に利用する。またVSB1破壊株において、GFP-Atg8プロセシングの検出等により、オートファジー活性が変化することを見出した。その作用機序については現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
構築したリンカー付き標識化タグ挿入型Vsb1を利用してVsb1の相互作用因子を特定するとともに、栄養条件による相互作用因子群の変化を明らかにする。また標識化タグ挿入型Vsb1を過剰発現させ、より広範囲の相互作用因子検出も試みる。Avt1についてはすでに相互作用候補因子を複数種同定しており、これらとの物理的相互作用検出を試みる。特定された相互作用因子候補の遺伝子を破壊し、液胞へのアミノ酸蓄積に及ぼす影響を調べることにより液胞膜を介したアミノ酸輸送活性調節への関与を検討するとともに、TORC1をはじめとする各種栄養シグナリング活性およびオートファジーに与える影響を調べ、液胞内へのアミノ酸輸送の生理的意義を明らかにする。 また、すでに野生株とVSB1遺伝子破壊株の遺伝子発現を網羅的に解析し、VSB1破壊によって顕著な発現変化を示す遺伝子を見出している。これを足がかりに液胞内に塩基性アミノ酸を蓄積する生理的意義について検討を進める。またAVT1遺伝子破壊株についても発現プロファイルを調べ、液胞へのアミノ酸輸送を起点とした栄養シグナリングの変化について検討する。液胞膜小胞を用いたアミノ酸輸送活性検出では液胞膜に局在する他のトランスポーターの作用を排除することができない。正確な速度論的解析を行うために、Vsb1およびAvt1のバキュロウイルスおよびコムギ胚芽抽出液を用いた発現・精製条件および、リポソームへの再構成条件の最適化が必要である。
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