2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞外小胞への選択的・効率的なタンパク質輸送系構築
Project/Area Number |
21K05385
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴田 俊生 九州大学, 理学研究院, 助教 (00614257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | N-ミリストイル化 / S-パルミトイル化 / 脂質修飾 / 細胞外小胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脂質修飾が施されることにより細胞外小胞(EV、エクソソーム)として細胞外へと分泌されるタンパク質に着目し、脂質修飾依存的なタンパク質分泌機構を解明するとともに、この分泌の仕組みを他タンパク質へ応用することを目指した。一般的に分泌されたEVは、血流やリンパ液に乗った後、遠隔器官の細胞に取り込まれることによって内容物の受け渡しが行われるため、がんなどのマーカーとして利用されるとともに、生理活性タンパク質の輸送体としても着目されている。この言わば細胞間情報伝達を媒介するEVについて、当該の年度ではその機構の応用を行うとともに、細胞への取り込み効率の向上について研究を行った。 まず、前年度までに見出された、脂質修飾が施されることで高効率にEVへと輸送される配列(EVタグ)を種々のタンパク質のN末端へ結合させ、その分泌効率をウエスタンブロットなどにより確認した。その結果、多くのものついてその分泌効率の上昇が確認された。 さらに、分泌されたEVの他の細胞への取り込みについて解析を行った。EVの取り込みを促進させると推定された酵素を培養細胞中で過剰発現させた。すると、この酵素存在下で分泌されたEVにおいて、非存在下と比較し、他の細胞への有意なEV取り込み上昇が確認された。 本成果で見出されたEV分泌機構と取り込み機構を応用することで、生理活性を有する様々のタンパク質の高効率なEVパッケージングと、生体内でのその機能発揮に効果が期待されると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、脂質修飾依存的に高効率にEVへと輸送される配列(EVタグ)を決定し、その輸送に関わる経路の決定を行った。当該の年度では、EVタグを種々のタンパク質結合させ、その分泌の効率を評価した。その結果、多くのタンパク質においてEVを介した分泌の促進が確認された。 また、EVは分泌後に他の細胞に取り込まれることによって、内容物であるタンパク質や機能性RNAなどが細胞内へ放出され機能が発揮される。そこで、分泌されたEVの細胞への取り込みについて着目した。EV取り込み促進に関与すると推定された酵素を細胞に過剰発現されると、EV中にこの酵素が高効率に積み込まれること、さらにはEVの他の細胞への有意な取り込み上昇が確認された。また脂質修飾依存的にEVへと積み込まれるタンパク質については、EV取り込み促進酵素存在下でより効率的にEVへ集積されることが確認された。現在は本酵素とEVへの集積の関係を脂質修飾の観点から解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、EVタグを用いた種々のタンパク質の分泌効率上昇について確認を行ってきた。さらに、分泌後のEVの取り込みを促進させる酵素の特定を完了した。今後は、EVタグ付加タンパク質の取り込み先での機能を確認したい。また、一部のタンパク質について、EVタグではその分泌が認められなかった。その原因を探るため、脂質修飾の有無や細胞内での挙動を代謝標識や免疫染色を用いて確認したい。 さらに本研究を介して、脂質修飾依存的な自然免疫経路の調節機構の一端を見出した。脂質修飾を異常にすることで、ある免疫関連遺伝子の発現の破綻が確認された。今後はその経路の脂質修飾タンパク質の特定やその機構について解析したい。
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