2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外小胞への選択的・効率的なタンパク質輸送系構築
Project/Area Number |
21K05385
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴田 俊生 九州大学, 理学研究院, 助教 (00614257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / トランスグルタミナーゼ / 脂質修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の架橋反応、いわば「糊付け反応」を触媒するトランスグルタミナーゼ(TG)は、皮膚の形成や血液凝固、細胞内シグナル伝達などに関わる生体に必須の酵素である。代表者らはこれまでに、ショウジョウバエのTGの一種であるTG-Aは一般的なN末端の分泌シグナル配列を有しておらず、代わりに脂質修飾を受けることで、細胞外小胞(EV)に内包された状態で分泌されることを見出した。本研究では細胞およびハエ個体を用いた実験から、TG-Aの配列を改変した高効率なEV分泌システムを構築すること、並びに脂質修飾が引き起こす新たな生理機能を明らかにすることを目的とした。 一般的に分泌されたEVは血流やリンパ液に乗り、遠隔の器官に情報を届ける細胞間情報伝達に関わることが知られており、生体の恒常性並びにがんの転移などに関与している。これまでの代表者らの研究により、TG-AのN末端から8つのアミノ酸が脂質修飾とEVへの内包化に必要かつ十分な条件であることが判明している。本年度までにこの配列に改変を施すと、脂質修飾の割合が向上し、EVへの内包化率も有意に上昇することが認められた。また、この配列を生理活性タンパク質に付加すると、TG-Aと同様にEVとして分泌されること、さらには他の細胞に取り込まれてその細胞において機能を発揮することを確認した。 さらにこの研究の過程において、脂質修飾がハエ生体において自然免疫経路の制御に関与することが見出された。脂質修飾を阻害すると経路の過剰な亢進が引き起こされ、ひいては短命となることが分かった。現在は脂質修飾を受ける因子を特定するとともに、その生理的意義を調べているところである。
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