2021 Fiscal Year Research-status Report
フラビンタンパク質機能から紐解くAshbya gossypiiリボフラビン生産
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21K05390
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
加藤 竜也 静岡大学, 農学部, 教授 (00397366)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラビンタンパク質 / リボフラビン / Ashbya gossypii / アセト乳酸合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まずターゲットとするフラビンタンパク質を選ぶために、Ashbya gossypiiリボフラビン過剰生産変異株におけるフラビンタンパク質の機能を野生株と比較した。過剰生産変異株において遺伝子の変異が認められた、4つのフラビンタンパク質(NADH脱水素酵素、コハク酸脱水素酵素、グルタチオン還元酵素、アセト乳酸合成酵素)の比活性を細胞破砕液で測定した。過剰生産株では、NADH脱水素酵素とコハク酸脱水素酵素の比活性が劇的に低下していたのに対し、グルタチオン還元酵素とアセト乳酸合成酵素の比活性は上昇していた。NADH脱水素酵素とコハク酸脱水素酵素の比活性が劇的に低下していたことは、過剰生産株のミトコンドリア膜電位が野生株に比べて減少していたことと一致していた。 次にそれらの酵素をコードする遺伝子発現量を、定量的逆転写PCRで解析した。NADH脱水素酵素(AgNDI1)とコハク酸脱水素酵素(AgSDH1とAgSDH2)、グルタチオン還元酵素遺伝子(AgGLR1)の発現量は、過剰生産株で劇的に上昇していたが、アセト乳酸合成酵素(AgIVL2)の発現量は、比活性が約20倍以上上昇していたのにもかかわらず、約2倍程度しか上昇していなかった。また過剰生産株では、リボフラビン生合成遺伝子(AgRIB1,2,3,4,5,7)の発現量が野生株に比べて数倍から数十倍上昇していた。 以上の結果より、リボフラビン過剰生産株ではアセト乳酸合成酵素の酵素活性が野生株より上昇しており、フラビンタンパク質としてリボフラビン過剰生産に関与していると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度1年目では、Ashbya gossypiiリボフラビン過剰生産株の様々なフラビンタンパク質の酵素活性を測定し、リボフラビン過剰生産と関連があると推測されるフラビンタンパク質を選択することを目的としていた。研究実績の概要にも表記しているが、リボフラビン過剰生産株においてアセト乳酸合成酵素の比活性が約20倍に上昇しており、アセト乳酸合成酵素をターゲットとして見出し目的は達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこのアセト乳酸合成酵素をコードする遺伝子(AgILV2とAgILV6)破壊株を構築し、リボフラビン生産への影響を確認するとともに、アセト乳酸合成酵素の阻害剤であるバリンなどを添加することでも、このアセト乳酸合成酵素とリボフラビン生産との関係を明らかにする。またSaccharomyces ceravisiaeにおいて、アセト乳酸合成酵素が細胞内の活性酸素種(ROS)のセンサーとして働いているという報告があるため、アセト乳酸合成酵素とROS、リボフラビン生産の関係を調べる。さらにフラビンタンパク質の普遍的な阻害剤であるdiphenyleneiodonium を用いて、フラビンタンパク質とリボフラビン生産との関係を、酵素活性や遺伝子発現の面から明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
バイオシェーカーを購入予定であったが、使用できるバイオシェーカーに目途がつき購入をしなかったため、差が生じた。今後の計画で予定よりも消耗品(抗体や阻害剤)の支出が増えるため、それらを購入するためにその差額分の予算を充てる。
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