2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K05392
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 真理子 京都大学, 化学研究所, 助教 (90736646)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホスホイノシチド / 脂質 / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
花粉の発芽は、作物種において人工受粉の効率や、種子が可食部となる穀類では収量に直結する過程であることから重要である。しかし、花粉の発芽に関わる分子機構は不明な点が多い。応募者は、ホスホイノシチドの一種であるホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(以下PI(4,5)P2と記す)の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子群を欠失したシロイヌナズナでは、花粉の発芽が不全となることを発見した。本研究では、このシロイヌナズナ変異体を詳細に調べることにより、花粉の発芽に関わるメカニズムの一端を解き明かすことを目的とする。本年度はPI(4,5)P2代謝酵素の細胞内局在を調べるため、PI(4,5)P2代謝酵素の下流に蛍光タンパク質(YFP)を付加した融合タンパク質を自プロモーターの下流で発現するシロイヌナズナを作製した。作製した形質転換シロイヌナズナの花粉を共焦点レーザー顕微鏡下で観察したところ、融合タンパク質に由来する蛍光は花粉が発芽する前に、発芽の予定位置の細胞膜に観察されることが分かった。また、作製したYFP融合タンパク質をシロイヌナズナ変異体内で発現させたところ、変異体に観察された発芽不全の表現型は野生型のシロイヌナズナと同程度に回復したことから、変異体の表現型はPI(4,5)P2代謝酵素をコードする遺伝子の異常が原因であることが分かった。次に、シロイヌナズナ変異体の花粉を組織化学的な手法を用いて調べたところ、野生株の花粉では観察されるカロースやペクチンの沈着が、変異体の花粉では観察されないことが分かった。これらの結果から、PI(4,5)P2代謝酵素遺伝子の機能は、花粉の発芽に先立ち重要な役割を担うことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目は、形質転換シロイヌナズナを作製し、作製した植物体を用いて顕微鏡による観察を行う予定であった。当初の予定どおり形質転換シロイヌナズナを作製し、観察を実施することができた。また、組織化学的な手法を用いた解析を予定どおり実施し、新たな知見を得ることができた。以上の結果から、おおむね良好であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナ多重変異体の花粉は発芽不全となる。花粉が発芽するとき、花粉内ではさまざまな事象が観察されることが知られている。変異体の花粉では、野生型シロイヌナズナの花粉で観察されるそれらの事象が観察されるかを調べる。また、過剰発現株を作製し、過剰発現株の花粉では発芽が促進されるかを調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画当初の予定にいくつか変更が生じた。実験試薬やプラスチック製品の中には輸入品のため入手に時間がかかるものがあった。このため、大筋の実験計画に変更はないが、当初使用する予定であった試薬や製品を他メーカーに変更することや、一部の実験時期を前後するなどした。また、一年目に国内学会への参加と、実験補助員を雇用する予定であったが、コロナ禍によりいずれも取りやめた。これらの理由から、今年度使用額の一部を次年度に繰り越した。
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Research Products
(1 results)