2021 Fiscal Year Annual Research Report
病態でのサルフェン硫黄含有分子種による代謝シフト機構の解明
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21K05398
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
田中 智弘 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 新分野創成センター, 特任助教 (00812760)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 活性硫黄分子種 / ミトコンドリア / 心筋梗塞 / 硫化水素 / 心臓スライスイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素の欠乏など、代謝が大きく変化する病態において、硫黄代謝の寄与は非常に大きいが、その詳しいメカニズムはほとんど分かっていない。本研究では、反応性の高いサルフェン硫黄を有する硫黄代謝物「活性硫黄分子」が細胞内から検出されることや、それらがミトコンドリアのエネルギー代謝に大きく寄与していること、さらに細胞内では活性硫黄分子のあいだで反応が進行することに着目し、病態における「硫黄代謝シフト」を捉え、そのメカニズムを理解することを目的とする。 そこで、活性酸素の除去など「抗酸化作用」をもつ求核型と、求電子型(酸化型)それぞれの活性硫黄分子の組織内での動態を、特異的なプローブを用いたイメージングによって明らかにし、硫黄代謝シフトを起こす因子の探索・同定を目指すものである。 【初年度に実施した研究成果】ミトコンドリアによるエネルギー代謝や硫黄代謝の異常が示唆されており、かつ、病変部位を明瞭に区別できるin vivo疾患モデルとして、マウス心筋梗塞モデルを用いた。マウス冠動脈を結紮後、病態の急性期(術後1週)において、ビブラトームを用いて急性心臓スライス標本を作製し、梗塞領域周辺部位における活性硫黄分子種レベルを蛍光プローブによって評価した。その結果、求核型の活性硫黄分子種(QS10)のレベルは梗塞領域において顕著に減少していた。これに対して、硫化水素(HSip-1 DA)レベルは梗塞領域を中心に左室全体で高くなっていた。これらの結果から、局所的に酸素欠乏に陥った心臓組織では、たしかに梗塞領域における「硫黄代謝シフト」が起こっていることが示唆された。
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