2022 Fiscal Year Research-status Report
Integrated analysis of chemical reaction products in Cretaceous amber and their biological activity
Project/Area Number |
21K05399
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木村 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (30344625)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越野 広雪 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (50321758)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 久慈産琥珀 / 遺伝子変異酵母株 / kujigamberol / rsp5A401E株 / RBL-2H3細胞 / コーパル / 中国撫順産琥珀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は、久慈産琥珀粉末のメタノール抽出物(MEKA)から、主にアッセイ法の変更により、これまで単離できなかった生物活性物質を単離精製して構造を決定することである。その結果、新たに明らかにした新規物質の構造を加えたこれまでの構造の集合体から、「元のジテルペノイドから炭素が1~4個欠如した上に、環化・芳香環化、酸化・還元、脱炭酸等の続成作用で久慈産琥珀からのみ新規物質が単離される」という謎を解明していく。また、同時にMEKA自体の抗アレルギーを中心とした生物活性が、単一物質と同等に強い理由も解明する。
(1)新規物質の単離精製と構造決定:昨年度、ユビキチンリガーゼに関わる遺伝子変異酵母rsp5A401E株の生育回復活性で単離精製した、2種の新規物質を中心とした研究をさらに進め、天然有機化合物討論会で発表した。また、新たにRBL-2H3細胞の脱顆粒抑制反応をアッセイ系として用い、新規物質2種と既知物質2種を単離精製した(未発表)。MEKAでの研究をサポートする物質として、マダガスカル産コーパルと中国撫順産琥珀の生物活性を調べ、活性が認められたため活性物質を単離精製して構造を決定したところ、前者からはisoozic acidを、後者からはdehydroabietic acidとdehydroabietaneを同定し、それぞれ10月の日本農芸化学会北海道支部・東北支部合同大会と3月の全国大会で発表した。 (2)単離精製した化合物の生物活性:マダガスカル産コーパルから単離したisoozic acidが、kujigamberolより強力な脱顆粒抑制活性を示すことを明らかにした。また、MEKAとspirolactone norditerpenoidのグルコース産生抑制活性について特許申請を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の目的では、久慈産琥珀粉末のメタノール抽出物(MEKA)からの生物活性物質に焦点を当てて進めていた。その間、琥珀の様な化石が天然資源として興味深く、新規物質がさらに単離されるのではと考え、市販の化石100種を購入し、全て粉末化等を行い抽出物を得た。それらを、研究室の6種の遺伝子変異酵母株で活性を調べたところ、琥珀関連のコーパルという化石に強い活性が認められた。そこで、残念ながら通説とは異なりわずか300年前ほどの化石とは言えないものであることが最近論文で明らかにされたものの、マダガスカル産コーパルを1 kg購入し、久慈産琥珀と類似の活性が認められたことから構造の参考になると考え研究を進めた。その結果、琥珀の起源化合物と考えられる構造のisoozic acidが得られた。
久慈産琥珀以外の世界の琥珀を、単離精製用に手に入れることは大変難しい。今年度、本研究にご協力を頂いている久慈琥珀(株)が中国撫順産琥珀を手に入れたことから、それを少量購入して調べたところ、久慈産琥珀とは遺伝子変異酵母株に対する表現型が異なる活性を見出した。そこで、活性物質の単離精製を行ったところ、バルト海産琥珀にも含まれるdehydroabetic acidと同定したが、HPLC分析パターンにおいては、多くの成分はバルト海産琥珀とは異なることが明らかとなった。
さらに、kujigamberol Bの全合成の共同研究を東京農大の矢島新先生と共同で行い、学会発表と論文発表を行った。以上の点から、今年度は久慈産琥珀からの新たなアッセイ系を用いた探索以外に、予期しない興味深い結果が多々得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)昨年度rsp5A401E株を用いて見つけた2種の新規物質 [5-Hydroxy-15, 19, 20-trinor-4, 5-seco-5, 7, 9-labdatrien-4-one (4, 5-seco-Kujigamberol)、15-nor-5, 7, 9-drimatrien-3-ol] を中心に、英語論文にまとめていく。(2)今年度、RBL-2H3細胞の脱顆粒抑制反応で新たに単離精製した2種の新規物質(15,20-dinor-5,7,9-labdatriene-1,11-dioneと15,20-dinor-5,7,9-labdatrien-17-oic acid)と2種の既知物質(8-drimen-14-oic acidと16,17-bisnorcallitrisic acid)について、天然有機化合物討論会で発表する。(3)今年度、マダガスカル産コーパルと中国撫順産琥珀から得た化合物を中心に脱顆粒反応を調べ、6月の日本生化学会東北支部で発表する。(4)久慈産琥珀メタノール抽出物からは、引き続きUV吸収が弱い物質やメラニン産生抑制物質などを探索していく。(5)新たに手に入れたウクライナ産琥珀やスマトラ産琥珀からも、生物活性物質を単離精製して構造を明らかにする。
|