2022 Fiscal Year Research-status Report
クサカゲロウ緑色色素の同定ならびに生合成経路の解明
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21K05402
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
西脇 寿 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (30508784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニッポンクサカゲロウ / 色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにニッポンクサカゲロウ成虫の磨砕液から各種カラムクロマトグラフィーを用いて緑色色素を精製するとともに、MSを含む機器分析を実施することにより、体色には複数の低分子有機化合物だけでなく、高分子成分も関与していることを明らかにしてきた。さらに、低分子緑色色素のうち、既知である緑色色素成分の生合成に関与する酸化還元酵素をコードする遺伝子配列をクサカゲロウのRNAseqのデータをもとに数種明らかにしてきた。 令和4年度は、これらの既知緑色色素成分の生合成に関わっている酵素をコードするmRNAの発現量に緑色成虫と茶色の越冬成虫との間で違いがあるのかRT-PCRを用いて定量した。その結果、定量した酵素のうち、緑色個体と茶色個体との間で有意に発現量に違いが認められる酵素が存在することを明らかにした。次に、これら酵素をコードする遺伝子配列をもとにdsRNAを調製し、それらを3齢幼虫に注射投与した後羽化させて、成虫の体色や形態を観察した。その結果、RNAiにより成虫個体内で酵素をコードするmRNA量が抑制されていることが確認できた一方で、形態や色調などに大きな違いは認められなかった。さらに、大腸菌を用いて過剰発現させたこれらの酵素の活性を評価したところ、検討した酵素すべてに基質を分解する活性が認められた。以上のことから、既知緑色色素は、確かに成虫体内に存在するものの、体色に大きな影響をおよぼしていない可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載していた緑色色素の生合成に関与する酵素に関して、RT-PCRによる定量、RNAiによる抑制、酵素過剰発現体の活性評価など順調に取り組み、新規知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
低分子有機化合物の構造を検討するとともに、高分子量を有する緑色色素成分に研究をシフトしていく。また、同定した緑色色素が蛹や卵の期間に存在するのか検討する。さらに、既知緑色色素を含む緑色色素成分の性質を精査し、産業への応用が可能か検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは令和3年度使用予定であったRNAseqの費用である。令和5年度に蛹期や卵に色素が含まれているのか検討後、実施することを計画している。
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