2021 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of novel aminoacyl-sterol derivatives in fungi
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21K05406
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
久城 哲夫 明治大学, 農学部, 専任教授 (80373299)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ステロールアミノ酸誘導体 / エルゴステロール / アミノアシルtRNA合成酵素 / 麹菌 / 菌核形成 / 分生子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌由来アミノアシルtRNA合成酵素に付随したドメインとして発見されたAspRS-DUF2156(ErdS)は、新規のステロールアミノ酸誘導体であるエルゴステリルアスパラギン酸(Erg-Asp)をtRNA依存的に生合成することが発見された。Erg-Aspの生理作用を調べるため、まずはErg-Asp結合タンパク質の探索に用いるアフィニティーカラム合成のための基質の調製を行った。Erg-Aspのより安定な類縁体としてコレステロールにアスパラギン酸をアミドで結合させたコレステリルアスパラタミド(Cho-Asp amide)をコレステロールから5段階で合成した。次に、Erg-Aspがオートファジーに関わるかを調べるため、麹菌Aspergillus oryzaeにおいて窒素欠乏条件下でErg-Aspの内生量を調べたところ、Erg-Aspがほぼ完全に消失することが分かった。そこで、erdS欠損株を用いてオートファゴソームの形成をAtg8-GFPを用いて蛍光観察したところ、野生株と比較して差は見られなかった。また、erdS欠損株におけるオートファジー関連遺伝子の発現を調べたが野生株との差は見られなかった。以上の結果より、Erg-Aspはオートファジーには関与していないことが示唆された。一方、erdS欠損株においては最小培地で培養した際に分生子の量が著しく減少することが見出された。さらに、菌核形成の促進が顕著に観察されたことから、Erg-Aspは分生子や菌核形成など糸状菌の生殖に関与することが強く示唆された。また、ErdSとは別にDUF2156単独のタンパク質をコードする遺伝子ergSを見出し、機能解析の結果、ErgSはグリシンが結合したErg-Glyを生成することを発見した。次年度以降、Erg-Glyの生理作用に関してもErg-Aspと同時に調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Erg-Asp結合タンパク質の探索のためのアフィニティーカラムの合成に関して、合成の基質となるアミド体(Cho-Asp amide)の合成を完了することができた。また、当初はErg-Aspがオートファジーと関連があるのではないかと期待していたが、今年度の結果により関係がなさそうであることが分かった。しかし一方で、Erg-Aspは分生子や菌核の形成に深く関与していることが強く示唆された。これはErg-Aspの作用機序の解明へ向けての大きな成果であった。また、オートファジーとの関連性はなさそうなものの、窒素欠乏条件下においてErg-Aspの内生量が激減したことは何らかのメカニズムが働いており、この点は今後Erg-Aspの生理作用を調べていく端緒となった。さらに、新たに見出されたErgSによりErg-Glyが合成されていることが分かり、エルゴステロールのアミノ酸による修飾がアスパラギン酸だけでなくグリシンも存在することが明らかとなるなど、大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、Erg-Asp結合タンパク質の探索のためのアフィニティーカラムの合成を完成させる。さらに、Erg-Aspと分生子や菌核形成との関連を詳しく調べていく。これらの形成過程は、velvet complexと呼ばれるタンパク質複合体によって制御されることが知られているため、erdS欠損株においてvelvet complexに含まれるタンパク質の発現解析を行っていく。また、Erg-Asp添加時のvelvet complexの挙動などを調べていく。さらに、Erg-Aspが細胞膜の性質に影響するのかを調べるべく、erdS欠損株における種々のストレス感受性試験や薬剤耐性試験を行っていく。一方、新たに発見されたErg-Glyに関してもErg-Asp同様にその生理作用を探索していく。
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Research Products
(5 results)