2021 Fiscal Year Research-status Report
植物寄生性農害虫孵化促進活性を有する歪んだ架橋型多環性天然物の合成研究
Project/Area Number |
21K05409
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安立 昌篤 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (80432251)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 天然物化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特異かつ高度に歪んだ架橋型多環性骨格を合成して、生理活性の詳細が未だ明らかにされていない希少天然有機化合物の収束的な 化学合成と系統的な構造活性相関研究を目的としている。具体的には、植物寄生性農害虫であるジャガイモシスト線虫の孵化機構において重要 な因子であり、高度に歪んだシクロブタン骨格を含むソラノエクレピンAの合成研究を行う。 ソラノエクレピンAは、三員環から七員環までの全ての炭素環からなる非常に特異な化学構造を有している。特に、生理活性発現に必須であると考えられる右側部分は、連続する不斉四級炭素を含み高度に歪んだシクロブタンからなるトリシクロ[5.2.1.01,6]デカン(DEF環)であるため、その合成は極めて挑戦的である。 この本研究では、4-exo-trig型ラジカル環化反応 を機軸として、高度に多官能基化されたシクロブタンを含む特異な架橋型多環性骨格の効率的な合成法を確立する同時に、収束的な合成経路の開発によってソラノエクレピンAおよびその関連化合物(構造単純化アナログ)の化学合成による量的供給を目的としている。 さらに、ソラノエクレピンAの合成経路を確立した後は、シスト線虫孵化促進活性を保持した単純化アナログの設計を目指す。一部の環構造や官能基を省略した構造単純化セグメントを左右それぞれ用意し、系統的な誘導体(右側あるいは左側単純化アナログ)を合成する。系統的な構造活性相関研究を展開することで、孵化の分子機構解明とシスト線虫駆除剤のリード化合物の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度では、先に述べたようにごく最近、申請者が確立したSmI2による4-exo-trig型ラジカル環化によって得られるトリシクロデカ ンに対して、17位側鎖の官能基変換とヒドロキシメチル基を導入した右セグメントの合成に成功した。ヨウ化サマリウムを用いた4-exo-trig型ラジカル環化を検討した結果、望むトリシクロデカンが良好な収率で得られた。その後、立体障害の比較的 大きい8位側に官能基を導入する必要があるため、隣接する15位水酸基を利用して中間体を経由する合成法なども検討したが、8位への側鎖導入が達成できないかった。そこで、Hajos-Parrishケ トンから予め8位に側鎖を導入した後、環化前駆体であるアルデヒドの合成に計画した。 一方、Nozaki-Hiyama-Kishi反応によって左右セグメントの連結および七員環(C環)の構築法を検討するため、四環性モデル化合物で条件検討を試みた。検討の結果、左セグメントとアルケニルトリフラートを用いることで、Nozaki-Hiyama-Kishi反応は速やかに進行し、カップリング体が良好な収率で得られた。さらに、七員環(C環)の構築のため、分子内アルドール反応によって七員環の構築を検討した。その結果、特定のアミノ酸が良好な結果を与えることがわかった。その後、メチルエーテル化を含む官能基変換によって、四環性モデル化合物への誘導を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を実施するにあたり、申請者が独自に確立したラジカル環化反応による炭素炭素結合反応によって、高度に多官能基化 されたシクロブタンを含む特異な多環性骨格の効率的な合成法を確立する。令和4年度以降は、ソラノエクレピンAの収束的な合成経路を確立 する。また、左右それぞれについて構造単純化したセグメントを用意し包括的な誘導体(構造単純化アナログ)を合成することで、農薬シードとして有望な化合物を見出す計画である。 令和4年度の合成計画:先に述べたように、17位側鎖の官能基変換とヒドロキシメチル基を導入した右セグメントである鍵中間体を合成に成功している。そのため、申請者が確立したSmI2による4-exo-trig型ラジカル環化の反応条件を種々検討して、トリシクロデカンの合成を目指す。また、G環構築を伴った変換によって、右セグメントの合成も計画している。 一方、ソラノエクレピンAの収束的な合成経路を確立する。左セグメントのアルデヒドと右セグメントのトリフラートをNozaki-Hiyama-Kishi反応によって連結する。次に、ジアルデヒドに対する分子内アルドール縮合によって、C環構築と種々の官能基変換を経て、ソラノエクレピンAを全合成する計画である。 ソラノエクレピンAの合成経路を確立した後は、シスト線虫孵化促進活性を保持した単純化アナログの設計を目指す。一部の環構造や官能基を省略した構造単純化セグメントを左右それぞれ用意し、系統的な誘導体(右側あるいは左側単純化アナログ)を合成する。
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Causes of Carryover |
(理由)モデル化合物の合成において、側鎖の導入には成功したが、前駆体の不安定性によって反応条件の最適化に時間を要したためである。 (計画)高価な遷移金属試薬など購入して、反応条件の最適化を行う。また、他の合成ルートも検討を行う予定である。
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[Journal Article] JBIR-155, a Specific Class D β‐Lactamase Inhibitor of Microbial Origin.2021
Author(s)
Nishimura, T.; Kawahara, T.; Kagaya, N.; Ogura, Y.; Takikawa, H.; Suenaga, H.; Adachi, M.; Hirokawa, T.; Doi, T.; Shin-ya, K.
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Journal Title
Org. Lett.
Volume: 23
Pages: 4415-4419
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Local Differences in the Toxin Amount and Composition of Tetrodotoxin and Related Compounds in Pufferfish (Chelonodon patoca) and Toxic Goby (Yongeichthys criniger) Juveniles.2021
Author(s)
Ito, M.; Furukawa, R.; Yasukawa, S.; Sato, M.; Oyama, H.; Okabe, T.; Suo, R.; Sugita, H.; Takatani, T.; Arakawa, O.; Adachi, M.; Toshio Nishikawa, T.; Itoi, S.
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Journal Title
Toxins
Volume: 14
Pages: 150
DOI
Peer Reviewed
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