2023 Fiscal Year Annual Research Report
脳内環境を保護するトリプトファン代謝鍵酵素の調節機構と食品を介した制御
Project/Area Number |
21K05420
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
江頭 祐嘉合 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (80213528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トリプトファン / ナイアシン / ACMSD / ミクログリア細胞 / アミロイドβ / キノリン酸 / LPS / IDO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の生体内において、2アミノ3カルボキシムコン酸6セミアルデヒド酸脱炭酸酵素(ACMSD)は、必須アミノ酸トリプトファンから水溶性ビタミンの一種ナイアシンへの転換率に大きく影響する鍵酵素であり、脳、肝臓、腎臓に発現している。トリプトファンは脳機能との関連、ナイアシンは寿命やサーチュインとの関連で近年注目されている。ACMSD活性は、トリプトファンからナイアシンへの転換率だけではなく、キノリン酸の産生とも関係があることを我々は見出した。キノリン酸は中枢神経系に多量に存在するとNMDAレセプターを介して神経毒として作用する。また、ACMSDはその変異においてパーキンソン病との関連が報告されている。ACMSDは、食餌条件、ホルモンシグナル、ある種の疾病で酵素活性が変動する。しかし急性および慢性炎症下での活性変動や食品による影響と作用機序は不明である。そこで、炎症を誘導したミクログリア細胞(脳内のマクロファージ細胞)に、血液脳関門を通過する各種アミノ酸を添加して、ACMSDおよび炎症により発現が誘導されるインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ1(IDO1)の発現、炎症マーカー(NO,TNF等)、作用機序を検討した。その結果、ある種のアミノ酸で炎症が抑制され、それに伴いACMSDおよびIDOの発現が変動した。さらにこのアミノ酸により炎症に関わる情報伝達機構の一部が阻害された。研究期間全体を通じて、ある種のフラボノイドやアミノ酸など炎症抑制効果の強い食品素材は、抗炎症作用を示すだけではなく、トリプトファン代謝鍵酵素にも作用することを明らかにした。
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