2023 Fiscal Year Annual Research Report
新たな機序の抗癌剤開発に向けて:食品成分の癌幹細胞抑制メカニズムの解析
Project/Area Number |
21K05440
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
遠藤 弘史 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (30567912)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ポリフェノール / がん幹細胞 / EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに,食品成分のヘスペレチンがヒト肺がん細胞株に対してアポトーシスを誘導することで,癌細胞の増殖を抑制することを報告してきた.しかし,がんの悪性化はその強い浸潤・転移・再発能にある.本研究では,食品成分のヘスペレチンは転移・再発の大きな要因と考えられているがん幹細胞(CSCs)に対して抑制効果を発揮することを明らかとした.この効果は,我々がこれまで明らかとしてきた,ストレスタンパク質の発現抑制に基づくことが示唆された.具体的には,細胞をストレスから保護する作用を有するタンパク質群であるストレスタンパク質の転写因子であるHSF1は,がん幹細胞の幹細胞性を維持するために必要なSox2とNanogの発現を増加させていることが示唆されている.HSF1の発現を抑制する食品成分を添加すると,これらの幹細胞維持因子の発現が低下し,それに伴って幹細胞の特徴であるスフェアとコロニーの形成,大腸がん幹細胞マーカーである DCLK1が抑制された.このことより,ヘスペレチンはこのHSF1の発現を抑制することで,がん幹細胞特性を失わせていることが示唆された. またHSF1はがんの浸潤・転移の原因である上皮間葉転換(EMT)を引き起こす因子の一つであることが知られている.本研究では,ヘスペレチンのHSF1抑制効果は,癌細胞の遊走能・浸潤能を低下させることも明らかとした. 以上のことから,ヘスペレチンは,がんの原発巣だけではなく,その後に起こる転移や浸潤,再発までも抑制する可能性を有しており,次世代の抗がん剤として非常に期待できる物質であることを明らかとした.このことは論文や学会で発表している.
|