2021 Fiscal Year Research-status Report
豆乳タンパク質の新たな視点による挙動解析と濃縮技術開発
Project/Area Number |
21K05449
|
Research Institution | Industrial Research Institute of Shizuoka Prefecture |
Principal Investigator |
松野 正幸 静岡県工業技術研究所, 食品科, 上席研究員 (20520737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山田 真 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (60235695)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 豆乳 / タンパク質 / 濃縮 / 凍結融解 / ゼータ電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
豆乳は通常、濃縮によりタンパク質が凝集して固化しやすい。しかし、溶液条件を調整してタンパク質のドロプレットを形成させることができれば、タンパク質の熱変性が抑えられ、流動性を保ったまま豆乳を濃縮できると考えた。 今年度は、国産大豆で作製した非加熱(生)豆乳を試料として、タンパク質ドロプレットの形成を試みた。手法として用いた凍結融解分画法は、生豆乳を1週間凍結後に融解すると上下二層に分離し、上層には可溶性タンパク質、下層には不溶性タンパク質及び脂質が主として含まれる簡易分画法である。生豆乳のpHまたは塩添加濃度条件を変更した上で凍結融解を施すことで、上層中にドロプレットが形成される条件を探索しつつ、二層分画可否の境界条件を調べた。 結果として、凍結前の生豆乳がpH調整群ではpH 5.8~6.7の場合、塩添加群ではNaCl添加濃度が0~0.22 Mまでの場合において凍結融解分画可能であった。分画で得られた上層を位相差顕微鏡及び共焦点レーザ顕微鏡により観察しており、ドロプレットの形成はまだ確認中である。下層についても調査を進めている。 また、凍結前の生豆乳についてゼータ電位を測定した結果、pH調整群及びNaCl添加群の双方で、-22~-29 mVの範囲が分画可能領域であった。このことから、生豆乳の凍結融解分画可否の指標としてゼータ電位を使用できる可能性が示唆された。 更に、非加熱豆乳のpHを強塩基性に調整した場合やNaCl濃度を大きく高めた場合に、豆乳中に含まれるタンパク質-脂質複合体の粒子径が初期サンプルと同程度の大きさで、尚且つ凍結融解後もこの粒子径変化が小さいといった興味深い現象が見られた。これは豆乳エマルションの安定性が高まった結果とことができ、本研究で目標とする豆乳の流動性を保持した濃縮技術にとって非常に効果的と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
凍結融解による生豆乳タンパク質分画液について、pH調整及びNaCl添加ではドロプレット形成が未確認であり、当初は続いてドロプレット形成の実績を有する天然変性タンパク質の添加を行う予定であったが、まだ実施していない。理由としては、pHの強塩基性調整及びNaCl高濃度添加による生豆乳エマルションの安定化とみられる現象が、豆乳の濃縮技術において高い効果を発揮すると考えられ、こちらの実験を優先して行っているためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状、当初想定していた豆乳タンパク質単独でのドロプレット形成は未確認だが 、この着想を広げて、pHの強塩基性調整またはNaCl高濃度添加による豆乳タンパク質-脂質複合体の安定化とみられる現象について考察を行っている。具体的には、脂質表面のタンパク質がドロプレットを構成するタンパク質のように、溶液条件を変える(pH:強塩基性⇔中性、NaCl:無添加⇔高濃度添加)ことで可逆的に変化するのではないかと考えている。この仮説が成り立てば、豆乳の流動性を保持した濃縮技術につながり得るため、こちらにも着目して研究を進めたい。実験としては、非加熱豆乳のNaCl濃度を高めた後、透析により初期濃度に戻した際、豆乳エマルションの状態が保存され、可逆的な変化を起こすかどうかを調べる。pHの強塩基性調整についても同様に非加熱豆乳タンパク質の可逆性を調べた後、更に、豆乳をエマルション安定化条件に調製した上で加熱濃縮を行い、粘度上昇がどの程度抑制されるかどうかについて調べる。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により旅費は使用できなかったが、予定していた学会発表等を今後行う際に使用する。同様の影響で、ゼータ電位測定用セル等の海外生産品は納期が大幅に遅れて発注できなかったため、使用できなかった物品費は今後使用する。
|
Research Products
(1 results)