2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation for active form of anthocyanin and bioactive mechanisms in neutral pH region
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21K05462
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
松本 均 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (00566292)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | anthocyanin / Delphinidin / Cyanidin / vasorelaxation |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの検討で、アントシアニン(AC)は、中性条件で48時間程度で分解し、一度低分子化した後、重合体を形成することは判明した。この低分子化した分解物には、血管弛緩活性が認められなかった。本年は、この重合体の血管弛緩活性の評価を重点的に行った。ACをpH7、37℃で6,12,24時間保持し、重合体を生成させた。この重合体を含むサンプルは、経時的に重合体が増加し、ACが減少していくことを確認し、血管弛緩活性の評価に供した。 結果は、Delphinidin-3-glucosideとDelphinidin-3-rutinosideは、経時的にACが分解し重合体が増加すると、血管弛緩活性は弱くなっていった。 反対に、Cyanidin-3-glucoside(C3G)とCyanidin-3-rutinoside(C3R)は、経時的にACが分解し重合体が増加するにつれて、血管弛緩活性は強くなっていった。 今回用いているACは、市販のカシスポリフェノール(PP)抽出物から精製したものであり、ACの含量として10%と35%の二つのPP抽出物について、別途、血管弛緩活性を評価しており、これらのPP抽出物は、ACをふくむ混合物であるが、強い弛緩活性を示している。その活性の強さは、血管弛緩薬として代表的なアセチルコリンの60%程度と、非常に強い活性を示した。 本来、本研究は、このPP抽出物のような強い弛緩活性を示す物質の探索を目的としている。しかし、これまでに得られた4種のACの血管弛緩活性は、アセチルコリンやPP抽出物と比較して緩慢な反応であり、弛緩活性も10~30%程度と小さい。また、本年の成果である、C3GとC3Rの重合体の弛緩活性も、AC単独よりは強いものの、アセチルコリンやPP抽出物ほど強くはない。すなわちPP抽出物中の弛緩活性は、AC以外の物質である可能性が高くなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、サンプルの調製、評価ともに、十分な数をこなすことができた。研究開始以前の予想は、アントシアニン(AC)が、分解した低分子化合物に血管弛緩活性があると考えていたが、予想に反して、低分子化した後すぐに重合反応が進んでいき、高分子物質が生成した。この高分子化合物には、血管弛緩活性は弱かった。このことからACおよび、その分解物、重合物は、血管弛緩活性の主成分とは、考えられない結果となった。早期に、この判断ができたのは、研究を推進していく上で、よかったと考える。 一方、血管弛緩活性を指標としながら、PP抽出物を分画していく過程の上で、ACと混合することで、元のPP抽出物と同等の血管弛緩活性をもつ画分を見出した。つまり、AC単独では、強い血管弛緩活性が得られないが、他の成分と共存することで、強い血管弛緩活性を持つ物質が存在する可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2つの方針で実験を進めていく。すなわち、一つ目は、上記のように、ACと共存することで、強い血管弛緩活性を発揮する物質の探索である。その画分が、どこにあるかは、判明しているため。その画分を大量に調製し、AC共存状態での、血管弛緩活性を評価しながら、その成分を探索していくこととする。本検討がすすめば、ACが血管弛緩活性の本体であることも考えられてくる。 また、PP抽出物中のACを含まない画分にも、強い血管弛緩活性をもつものを見出した。この画分も大量調整し、ACとは異なる活性成分を探索していくこととしたい。 NMR分析によると、大まかな構造が予想でき、糖質とポリフェノールを含む構造であることがわかっているが、詳細な構造は不明である。ゲルろ過による分析だと高分子化合物であることがわかっている。 そのままでは構造決定は、難しいことが予想されるため、酵素で糖を分解し、ポリフェノール部分の構造の解析を試みたい。
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Causes of Carryover |
予想外の実験結果となったため、予定していた分取用カラムや大量の有機溶媒の購入が延期となった。また、故障した分析装置の修理を来年度実施予定しているためである。
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