2022 Fiscal Year Research-status Report
IL-5産生細胞を中心とした腸内細菌の恒常性維持機構の解析
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21K05466
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Research Institution | Toyama Prefectural Institute for Pharmaceutical Research |
Principal Investigator |
柳橋 努 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (60710887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 輝美 (長井輝美) 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (20558134)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / IL-5 / IL-33 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの大腸には,1000種,100兆個もの腸内細菌が存在し,互いに相互作用を及ぼすことで複雑にバランスを保ち腸内細菌叢を形成している。近年,腸内細菌叢バランスの破綻が,炎症,代謝,神経疾患等の発症原因となることが明らかにされつつあり,これら疾病の予防や治療では腸内細菌叢を正常な状態に保つことが重要だと考えられている。 我々は定常状態のマウス大腸に,(1) インターロイキン5 (IL-5) を恒常的に産生する2型自然リンパ球 (ILC2) が多数存在すること,(2) IL-5欠損マウスでは腸内細菌叢の構成バランスが変化していることを見出している。一方,大腸ILC2の恒常的なIL-5産生がどのような機構で調節されているのかは十分に理解できていない。これまでの多くの研究により,腸内細菌が制御性T細胞やIL-17産生細胞等の免疫系細胞の誘導や活性化に深く関与することが示されている。また,研究代表者らはILC2活性化因子の一つであるIL-33を産生する細胞が大腸に多数存在することを見出している。これらの知見に基づき,本研究では腸内細菌およびIL-33に着眼し,定常状態の大腸ILC2のIL-5産生がどのように制御されているのか解析することで,腸内細菌叢の恒常性維持機構の一端を解明することを目的としている。 令和4年度までに,(1) 抗生剤処置により腸内細菌叢を変化させたマウスにおいてILC2のIL-5産生が減少すること,(2) IL-33を欠損したマウスにおいてILC2のIL-5産生が著しく障害されることを見出している。本研究の推進により定常状態の大腸ILC2のIL-5産生調節機構に関する解析をさらに進展させることで,ILC2を中心とした腸管恒常性維持機構の理解が深まると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,(1) 腸内細菌によるILC2のIL-5産生調節機構の解析,(2) IL-33産生細胞によるILC2のIL-5産生調節機構の解析の2つの着眼点から解析を進めている。(1) 腸内細菌によるILC2のIL-5産生調節機構の解析について,令和4年度はマウスに複数の抗生剤をそれぞれ単剤で投与し,大腸ILC2のIL-5産生が減少する抗生剤と変化しない抗生剤が存在することを見出した。さらに,それぞれの抗生剤処置マウスの腸内細菌叢を16s rRNAアンプリコンシーケンスにより解析したところ,ILC2のIL-5産生が減少した抗生剤処置でのみ存在割合が減少する腸内細菌が認められた。また,(2) IL-33産生細胞によるILC2のIL-5産生調節機構の解析に関連しそれぞれの抗生剤処置時の大腸IL-33 mRNA発現を調べたところ,ILC2のIL-5産生が減少した抗生剤処置において大腸IL-33発現が有意に減少していることを見出した。これらの結果から,大腸ILC2のIL-5産生が腸内細菌叢の構成変化により調節されていること,さらに特定の腸内細菌が大腸ILC2のIL-5産生を調節する可能性が示された。また,大腸ILC2のIL-5産生はIL-33に依存していることが分かった。 当初の計画よりも使用する抗生剤の種類を増やし,この解析に多くの時間を費やしたため,令和4年度に実施予定であった野生型マウスとIL-33欠損マウスのILC2を用いたRNA-seq解析は令和5年度実施に計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に実施予定であった計画を一部令和4年度に繰り越しているが研究全体として大きな計画変更はない。令和5年度は,(1) 腸内細菌によるILC2のIL-5産生調節機構の解析,(2) IL-33産生細胞によるILC2のIL-5産生調節機構の解析をさらに進展させる。(1) 腸内細菌によるILC2のIL-5産生調節機構の解析では,抗生剤処置によるILC2のIL-5産生減少が腸内細菌叢の変化に起因するかどうかをより明確にするため,抗生剤処置したマウスの腸内細菌をノーマルマウスに移植しILC2のIL-5産生が減少するか否かを解析する。(2) IL-33産生細胞によるILC2のIL-5産生調節機構の解析では,令和4年度に実施予定であった野生型マウスとIL-33欠損マウスのILC2を用いたRNA-seq解析を行う。得られた遺伝子発現情報を基にパスウェイ解析を実施し、腸内細菌により活性化するILC2のシグナル伝達経路を解析してIL-5産生の誘導に関連する因子を予想する。さらに、予想された因子でILC2をin vitro刺激しIL-5産生が亢進するか否かをELISA法で確認する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも使用する抗生剤の種類を増やし,この解析に多くの時間を費やしたため,令和4年度に実施予定であった野生型マウスとIL-33欠損マウスのILC2を用いたRNA-seq解析は令和5年度実施に計画を変更した。これに伴いRNA-seq解析費用を令和5年度に繰り越した。
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Research Products
(4 results)