2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of polysaccharides derived from barrel and their effect on wine flavor
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21K05467
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥田 徹 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10252008)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ワイン / 樽 / 糖類 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,糖に関する分析を続けた。予備試験として市販のチップ(ミディアムトースト)を使った抽出時には150mg/Lほどの糖類が検出されたが,作成したチップの場合,その量は70mg/L程度にとどまった。樽材の個体差や,トースト方法による違いがあるものと推察されたが,これらについては今後の課題とする。一方で,トースト温度により糖の抽出量は大きく異なり,260℃以上の場合は抽出量が大きく低下した。 また,その組成を調べたところ,トーストをしない場合でもアラビノースやグルコースを主体とした糖が検出され,その組成はトーストの条件により大きく異なり,木材中のセルロースやヘミセルロースなどが熱処理により変性していることが分かった。特に240℃と260℃で糖の組成は大きく異なり,260℃以上のトーストでは,グルコースが増えた。 検出された糖が,木材の加水分解によって生成すると仮定すると,その分子サイズも多様性があると考えられた。そこで,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び薄層クロマトグラフィー(TLC)により糖の分子量を推定した。その結果,モノマー~トリマー程度の非常に小さい糖が多く検出された。樽材が木材であり,数年のシーズニング(風雨にさらす)を行った材料であるため,当初の予測では,抽出される糖は多糖類が大半であると予想したが,本件は予想外の展開となった。これらの低分子の糖類は微生物が資化する可能性が高いため,ワインの貯蔵などにおいて微生物汚染の原因になる可能性が示唆された。 また,作成したチップをワインに添加する実験を予備的に行ったが,ワインの酸化によるアセトアルデヒドなどの生成が感じられ,溶存酸素などの管理の難しさが明らかになった。今後は,窒素バブリングなどを使用して対応する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,R4は糖の組成・分子量について分析が出来た。トーストの温度により糖類の組成が大きく異なることは,想定された変化であったが,本実験により確認できた。 一方で,実験前は樽材から抽出されるのは高分子多糖類であると予想していたが,低分子の糖類が予想以上に多いことが明らかになった。糖類の濃度が低いことから,これらが甘味に寄与するとは考えにくいが,一方で微生物汚染の原因として,ワインの製造上,考慮する必要があることが重要な発見となった。その意味では,当初予期しない大きな成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
トースト処理によって抽出される糖類が変化することは明らかになったが,本実験ではトーストの時間は10分間に固定して行った。トーストの時間を変化させた場合の組成変化にも興味が持たれる。そこで,トースト時間を変化させる実験を行う。 また,国産材であるミズナラ,クリ,ヤマザクラについても,同様の実験を行うことを考えている。 また,様々なチップを添加した場合の官能的な違いについても実験を行う予定である。 タンニン類について予備的に調べたところ,ヤマザクラでは抽出が非常に少ないことも明らかになっている。本課題では樽由来の糖類について分析を中心に行うが,産業的な利用の観点からも,様々な成分の特徴を考えながら実験を遂行したいと考えている。 糖類の抽出についてフレンチオークで明らかになったことを論文としてまとめた。これを出来るだけ早く投稿することを予定している。
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Research Products
(1 results)