2021 Fiscal Year Research-status Report
脂質異常症の原因遺伝子PLTPの発現制御機構の解明と動脈硬化誘発作用の証明
Project/Area Number |
21K05468
|
Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
小林 美里 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (20456586)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 高トリグリセリド / HDLコレステロール / 原因遺伝子 / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
C3H-Sマウスは、高トリグリセリド(TG)血症および低HDL-コレステロール血症を呈するモデルマウスである。我々はC3H-Sマウスと正常血中脂質濃度を示す対照マウスを用いて、遺伝解析を行い、原因遺伝子としてリン脂質転送タンパク質をコードする遺伝子を同定してきた。この原因遺伝子はC3H-Sで発現量が低下しているが、そのメカニズムが不明であった。そこで、遺伝子発現量を低下させる要因を明らかにするために、全ゲノムDNA配列の解読に着手した。原因遺伝子のエキソン領域と遺伝子発現調節に重要だと考えられる上流配列には変異がなかったものの、イントロン領域に正常血中脂質であるマウスでは見られない大きな挿入があることを明らかにした。この挿入は、高TG血症の原因遺伝子の遺伝子発現量を低下させるだけでなく、イントロン領域にある大きな挿入によって、原因遺伝子のスプライシング異常を引き起こす可能性が示唆されている。異常タンパク質の生成によって酵素活性が失われたと考えられる。酵素活性の低下したマウスでは、血中のTGが高値を示すことも明らかにし、原因遺伝子が血中脂質代謝を大きく変動させることを明らかにした。 また、このマウスでの食餌条件による高TG血症への影響をコレステロール添加食で検討したところ、原因遺伝子の肝臓での発現量は低下したが、血中の酵素活性は変化せず、TGは変動しなかった。しかし、コレステロール食によって高TG血症マウスでは、脂肪肝が強く誘導されたことから、食事条件によって異所性脂肪蓄積が生じることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は正常TGを示す対照マウスと高TG血症を示すC3H-Sマウスの全ゲノムDNAシークエンス解析を進めた。しかし、C3H-Sマウスの全ゲノムシークエンスでは原因遺伝子のイントロン内の配列が解読できなかった。6kbの挿入領域に繰り返し配列が存在しており、予定していたよりも、DNA配列の解読に多くの時間を費やす必要があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子の発現量低下のメカニズムについては解明が進んだが、高TG血症を引き起こすメカニズムについては不明である。そのため、マウス個体への脂質負荷試験や、肝臓からのVLDL放出量の測定を進める予定である。 また、原因遺伝子のタンパク質レベルでの検出ができていないことから、特異的な抗体の検討を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
全ゲノムDNAシークエンス解析を行ったところ、このモデルマウスの原因遺伝子の一部のDNA配列が解読困難であった。そこで、当初予定していなかった手法を採用し、その配列の解読に多くの時間を費やした。そのため、DNAシークエンス解析の結果を受けて、実施予定であったタンパク質レベルの解析や動物個体を用いた実験の着手が遅れることとなった。 着手の遅れた実験については次年度は実験者の体制を拡充して行う予定である。
|