2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸ムチンの質的・量的制御に関する分子機序の解明と大腸がん予防への展開
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21K05471
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
東村 泰希 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70628924)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸がん / 炎症性腸疾患 / ゴブレット細胞 / ムチン / レクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸粘液層の脆弱化は大腸がん発症に関与することから,粘液層を強固に保つことが大腸がん予防において肝要である.申請者はこれまでに,抗酸化経路と腸管疾患に関する研究を展開しており,中でも抗酸化酵素群の発現を制御する転写抑制因子であるBach1に着目している.本研究は,これら一連の成果の中で見出された「Bach1欠損に伴う大腸粘液分泌の亢進」という現象を発展させ,Bach1が大腸粘液の性状を制御する様相を分子レベルで解析し,大腸がん予防におけるBach1制御の意義について明らかにすることを研究目的とした.令和4年度においては,Bach1欠損が大腸ムチンの質的・量的な変化について明らかにすることを目指し研究をおこなった。 マウス大腸を用いた組織学的解析の結果,Bach1欠損マウスの大腸ではムチン産生を担うゴブレット細胞が増加しており,さらに一細胞あたりにおける粘液を内包した分泌顆粒の面積が増大することを見出した。一方で,糞便より粗精製したムチン画分を用いて便中ムチン含量を測定した結果,Bach1欠損マウスと野生型マウスの便中ムチン含量は同程度であったことから,Bach1欠損マウスではムチン分泌経路に異常が生じている可能性が示唆された.さらに,ムチン糖鎖組成についてレクチンアレイを用いた網羅的解析を実施した結果,Bach1マウスでは便中ムチンにおけるシアル酸やN-アセチルガラクトサミンが増加することを見出した.また,これら糖鎖を認識するレクチンを用いたレクチンブロットにおいても同様の結果が観察された.以上の結果より,Bach1遺伝子の欠損に伴い,ムチンの糖鎖修飾様式が変化することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bach1欠損に伴う大腸ムチンの質的変化に関する解析が順調に進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果より、Bach1遺伝子の欠損に伴い,ムチンの糖鎖修飾様式が変化し,その結果としてムチンの分泌異常が生じている可能性が示唆された.令和5年度においては,当該可能性の検証について,マウスを用いたin vivo試験およびムチン産生能を有するヒト大腸がん細胞株であるLS174T細胞を用いたin vitro試験を施行する予定である.in vivo試験としては,ウッシングチャンバー法や反転腸管法を用いた腸管透過性の評価ならびに,摘出した腸管を用いたex vivo腸管環流法によるムチン分泌能の評価を施行する予定である.また、in vitro試験としては,LS174T細胞に対して,RNA干渉やヘミン添加によるBach1の発現制御を実施し,糖鎖修飾やジスルフィド結合形成に関する酵素群ならびにムチン分泌に関わる遺伝子群(種々のチャネルタンパク質や膜受容体)の発現解析を実施する.有意な変化が観察された遺伝子に対しては,当該遺伝子のプロモーター領域を組み込んだレポーターアッセイ等の分子生物学的手法を用いて解析する.また,上記手法によるBach1発現制御が不十分である場合には,CRISPR-Cas9システムを用いたBach1ノックアウト細胞株の樹立も検討する予定である.
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の予定よりもスムーズに研究成果が得られたため。 (使用計画) 令和2年度に実施予定の研究に関して、当該繰越金を充填することで研究成果の進展を計る。
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Research Products
(9 results)