2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the effect and mechanism of short-term aging of fresh fish meat on the quality
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21K05477
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
塚正 泰之 近畿大学, 農学部, 教授 (90298943)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノシン酸 / うまみ / 魚肉 / グルタミン酸 / 熟成 / マダイ |
Outline of Annual Research Achievements |
魚の熟成が品質にどのように影響しているかを確認するため,マダイの活魚を即殺してフィレとした後,脱酸素剤と真空包装を併用して0℃で熟成を2週間実施し,0,1,3,5,7,14日目に試料のサンプリングを実施した。 肉量の1%の塩化ナトリウムを振りかけ15分後にふき取る塩締め処理の有無,脱水シート使用の有無,熟成期間の影響をドリップ量,pH,遊離アミノ酸,ATP関連化合物などを指標として測定した。また,熟成中には軟化などの物性変化が起こり噛んだ時に出るエキス成分の量にも影響すると考えられることから,エキス成分の抽出性の変化にも着目し,咀嚼をイメージしたパドル式ブレンダーによる抽出と全エキス成分抽出法としてのテーパー型ホモジナイザーによる抽出を行い,両者の比較を行った。 脱水シートを巻いて1晩熟成させることでドリップ量は4.3%増加し,エキス成分の抽出性を低下させた。塩化ナトリウムによる塩締めはドリップ量を2.4%増大させ,うま味成分の抽出性を低下させたが,イノシン酸(IMP)の分解には影響しなかった。pHはほぼ1日で再加点に到達した。 IMP量は熟成1日または3日以降低下したのに対して,グルタミン酸(Glu)量は熟成14日まで増加した。IMP(濃度をv)とGlu(濃度をu)の濃度から式(y=u+ruv,r=(1.218±0.057)×10^3)で算出されるうま味強度は,熟成1日がピークとはならず,少なくとも熟成5日まで高い値を維持することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあるとおり短期間の魚の熟成実験をマダイ活魚を用いて氷水中で熟成を行った。熟成に際しては無処理区と処理区を設定して比較した。実験1では塩化ナトリウムによる塩締めと脱水シートを併用し,実験2では塩化ナトリウムによる塩締めのみを試験区として実験した。 マダイの熟成によるドリップ量,遊離アミノ酸量,ATP関連化合物量などの影響を調べるとともに,異なる抽出方法を用いて肉からのエキス成分の抽出性の変化についても検討した。 その結果,イノシン酸(IMP)は熟成1日から3日で最大値に達するのに対して,グルタミン酸(Glu)は熟成14日まで増加することを確認した。さらに,抽出性の比較から熟成がエキス成分の抽出性に影響することを確認した。また,IMPとGlu量から算出されるうまみ強度から,熟成1日後がうま味のピークとはならず,熟成5日後まで高いうま味強度を保つことを確認した。 この成果については,日本水産学会誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
即殺したマダイを0℃で短期間熟成させることで,遊離グルタミン酸量が大幅に増加すること,うま味強度は熟成5日まで高い値を保つこと,熟成期間が長引くとエキス成分の抽出性が変化することなどが確認されれた。 当初の計画どおり短期熟成の効果についての知見をマダイで得ることができたことから,マダイと同様に刺身としての消費量が多く,マダイよりも脂肪含量が高いハマチを用いて,短期熟成が品質に及ぼす影響を調べる。マダイよりも脂質含量が高く,血合肉の変色(メト化)が品質に大きな影響を及ぼすことから,酸化,メト化率などの項目も測定する。また,マダイでは理化学検査だけを実施したが,ハマチについては倫理委員会の審査を受けた上で官能検査を用いた評価も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の研究は当初の予定通りに進み論文投稿まで行えたが,まだ審査中で投稿料,印刷料などの費用が発生しなかったため次年度使用額が発生したが,受理された時点で次年度使用額に相当する部分は支出する予定である。
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