2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05491
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
上野 有紀 愛知学院大学, 心身科学部, 准教授 (20388060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 太郎 摂南大学, 農学部, 准教授 (40395653)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大豆フェリチン / 鉄欠乏 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
貧血は世界的に患者数の多い疾患である。鉄供給源として非ヘム鉄やヘム鉄が使用されている。本研究は、酸化ストレスを引き起こしにくい可能性のある大豆フェリチンに着目し、検討を行う。大豆タンパク質の機能性は、先行研究によりコレステロール低下作用、脂質代謝調節作用などが報告されている。大豆フェリチンは、鉄貯蔵タンパク質として鉄含有量が高いのが特徴である。 本研究では、大豆フェリチンが生体内の酸化ストレスレベルを低く保ちつつ、鉄欠乏改善のための新たな鉄供給源となりえることを調べることを目的とした。今年度はまず、大豆フェリチンが腸管由来細胞に与える影響を調べた。ヒト腸管由来細胞株Caco-2を用い、経上皮電気抵抗(TEER)測定を行ったところ、大豆フェリチン投与による明らかな影響は見られなかった。分化させたCaco-2細胞に対し、大豆フェリチン投与による、代表的な抗酸化酵素(カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン合成酵素など)の遺伝子発現への経時的ならびに濃度依存的な影響を調べた。その結果、抗酸化酵素のうちSOD2の発現に対して、大豆フェリチンは投与12時間をピークとして一過的な上昇を誘導することを明らかにした。SOD2はマンガンを構成成分とすることから、鉄以外のミネラル代謝にも影響する可能性が考えられた。大豆フェリチンと無機鉄とでは、抗酸化酵素の発現誘導への影響は異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、大豆フェリチンによる腸管由来細胞における酸化ストレス応答を遺伝子発現を指標にして調べることができた。意外にもSOD2に対する一過的な応答を確認することができた。SOD2はマンガンを必要とすることから、大豆フェリチンは鉄以外のミネラル代謝にも影響を与える可能性について、より詳細な検討が必要である。当初の計画では、鉄欠乏モデル実験を行う予定としていたが、細胞培養条件の再検討が必要となったことから、次年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.鉄欠乏モデル実験:in vitroにおける鉄欠乏モデルにおいて、大豆フェリチンの鉄供給の評価と酸化ストレスに関する検討を行う。鉄供給の評価は、細胞内外の鉄の定量を行う。また酸化ストレスへの影響は、細胞内の活性酸素産生量、酸化ストレスマーカー、抗酸化酵素の活性・遺伝子発現量を指標に評価する。 2.ミネラル代謝への影響の検討:腸管由来細胞に対する大豆フェリチンの影響として、ミネラル代謝関連遺伝子解析、細胞内外のミネラルの定量などにより評価する。
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Causes of Carryover |
大豆フェリチンがミネラル代謝に与える影響の検討が必要となり、細胞培養の条件検討に時間を要したため、当初計画していた「鉄欠乏モデル実験」を行うことができず、次年度使用が生じた。次年度は「ミネラル代謝への影響の検討」とあわせて「鉄欠乏モデル実験」も行う予定である。
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