2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌モデルマウスにおけるフラボノイドの腫瘍・脂質代謝・免疫系におよぼす効果
Project/Area Number |
21K05493
|
Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
日野 真一郎 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00372699)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知香 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (80783125)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Wnt/β-カテニン経路 / フラボノイド / 腫瘍 / 脂質代謝 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン(tetra-methoxyflavone: TMF)を大腸癌モデル動物APCminマウスへ長期間経口投与したところ、APCmin/+マウスの体重減少が著明に抑制されることを見出していた。個体数を増やし詳細な解析を再度行ったところ、雄においては、5,7,3’,4’-TMFおよび7,8,3’,4’-TMFにより、APCmin/+マウスの体重減少の抑制効果を認めた。APCmin/+マウスの小腸での異型腺管において、通常β-カテニンシグナルの直接の標的とされるc-Mycの発現とβ-カテニンの核蓄積は一致せず、同一細胞内でcyclin D1がβ-カテニンシグナルにより誘導されていた。またβ-カテニンが蓄積している細胞の近傍において、がん化のマーカーであるERK1/2の活性化を認めた。APCmin/+マウスの肝臓では、中心静脈を取り囲む肝細胞に含まれるグリコーゲンの量が低下しており、何らかの糖代謝異常が生じていた。肝臓での糖代謝に関与するグルコース-6-ホスファターゼの発現量を解析したところ、APCmin/+マウスで著明に低下していることを見出した。APCmin/+マウスへの5,7,3’,4’-TMF投与により肝細胞内でのグリコーゲン量の回復を認めたが、G6PCの発現量に変化は認められなかった。APCmin/+マウスでは脾臓腫大、白脾髄・赤脾髄の構造の破綻、脾巨核球の増加を認めた。また、網状赤血球の著明な増加と単球の核と細胞質の染色性の異常を認め、血小板の増加傾向がみられた5,7,3’,4’-TMFの経口投与を行ったAPCmin/+マウスでは脾臓の白脾髄と赤脾髄の明瞭な境界を保つ構造の回復と脾臓実質の巨核球増加の抑制を認めたが、血液や骨髄へのTMFの効果は今回明らかにすることは出来なかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APCmin/+マウスの個体数維持に時間を要しているが、TMFの経口投与によりAPCmin/+マウスの消化管、肝臓、脾臓でのTMFの効果を形態学的に明らかにすることができている。APCmin/+マウスで遺伝子発現が亢進あるいは減弱している分子を新たに見出すことに成功していることからも進捗状況はおおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
APCmin/+マウスの小腸での異型腺管においてERK1/2の活性化を認めたが、TMF投与によりERK1/2の活性化を抑制する傾向を認めた。今後、どのようなメカニズムでTMFがERK1/2の活性化を抑制するかを検討していく予定である。巨核球の分化を制御する肝臓で分泌されるトロンボポイエチンや糖代謝に関わるホスホフルクトキナーゼなどの遺伝子発現動態をTMFが変化させるかを解析予定である。APCmin/+マウスでは、血液の状態に異常が見られるので、TMFの効果を血液成分の生化学的解析を行い解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
令和3年度中に購入予定であった抗体が国内になく、年度内に納品が出来なくなったため、令和4年度の使用となった。β-カテニンシグナルの直接のターゲットを免疫染色にて明らかにすることに用いる。
|
Research Products
(1 results)