2022 Fiscal Year Research-status Report
精子形成減数分裂期以降における完全な翻訳抑制と部分的な翻訳抑制の機構
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21K05498
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柏原 真一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00254318)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精子形成 / 翻訳制御 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子形成における翻訳制御に関して、令和4年度では以下の点を明らかにした。 ①ショ糖密度勾配遠心によりマウス精巣抽出液を、mRNAをほとんど含まない画分(トップ画分)、翻訳が抑制されたmRNAが含まれるmRNP画分、および翻訳が行われているポリソーム画分に分画し、オリゴ(dT)セルロースによるプルダウンを行った。プルダウン産物について、各タンパク質バンドをPMF解析により同定した。その結果、mRNP画分の主要構成タンパク質は、ポリソーム画分と同様、ポリ(A)鎖結合タンパク質PABPC1とY-box RNA結合タンパク質YBX2であることが判明した。令和3年度でのノックアウトマウスを用いた解析により、YBX2はグローバルな翻訳抑制にもmRNAの安定化にも重要ではないことが強く示唆されている。したがって、微量に含まれる未同定因子が、翻訳抑制におけるmRNP形成の「核」となっている可能性が考えられた。 ②予想に反し、トップ画分において多くのRNA結合タンパク質がプルダウンされた。プルダウンされたタンパク質は主に、mRNA前駆体に結合するhnRNPファミリータンパク質であった。これらタンパク質は普遍的に存在するが、精巣のような翻訳制御がほとんど行われない肝臓の同画分ではプルダウンされなかった。したがって、hnRNPファミリータンパク質が、精巣細胞質において一過的にmRNAに結合することにより、翻訳抑制に関与している可能性が考えられた。 ③抗EIF4E抗体を用いた精巣抽出液の免疫沈降により、肝臓ではみられないEIF4E結合因子を検出することができた。 ④精巣特異的に存在するPABPC6に関する研究の過程で、本タンパク質が普遍的なPABPC1とは異なり、翻訳不活性画分にのみ分布すること、またクロマトイドボディに濃縮されていることなどから、グローバルな翻訳抑制に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
hnRNPファミリータンパク質が、翻訳制御において精巣特異的な機能を有している可能性を示すことができた。また、肝臓では検出されないEIF4E結合因子を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EIF4E結合タンパク質を同定し、その翻訳への関与等を明らかにする。また、同定されたhnRNPファミリータンパク質の翻訳における機能を、lambdaN-BoxBシステムを用いたレポーターアッセイにより検証する。その一方で、mRNP画分に含まれるタンパク質についても、引き続き探索を行う予定である。さらに、PABPC6の機能に関して、ノックアウトマウスを用いた解析を進める計画である。
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Causes of Carryover |
オリゴ(dT)プルダウンによるmRNA結合因子の探索・同定が、想定していた以上に順調に進んだ一方で、それらの機能評価実験(レポーターアッセイなど)にまで至らなかったため、次年度使用が生じた。次年度使用分については、おもにこれら因子の機能解析のために使用する予定である。
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