2022 Fiscal Year Research-status Report
植食性昆虫とその腸内細菌による危険信号分子の産生と植物の受容機構
Project/Area Number |
21K05506
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新屋 友規 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80514207)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 植物-昆虫間相互作用 / 植物免疫 / 細胞壁 / イネ / 植食性昆虫 / 腸内細菌 / エリシター |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は外敵との攻防において、外敵を適切に認識することで効果的に防御機構を駆動する。植食性昆虫の食害にともない、植物自身の損傷により様々な植物由来の分子が生じ、その一部がエリシターとして植物に認識されることが知られている。近年、我々も植物細胞壁由来の新規糖鎖エリシターを、イネとクサシロキヨトウの相互作用系から見出していた。本研究は、イネ細胞壁損傷におけるクサシロキヨトウ腸内細菌の関与に注目して、植物由来エリシターの食害時産生メカニズムを明らかにするとともに、植物の昆虫エリシター認識機構に迫る研究を行うことを目的としている。 令和3年度までに、クサシロキヨトウの腸内細菌がイネ由来エリシター産生に関与していることを明らかにしていた。さらに令和4年度までに、クサシロキヨトウの腸内細菌の菌叢解析を行った。菌叢解析によって見出された腸内細菌が、糖鎖エリシター産生に関わる酵素を有しているかどうかを調べたところ、一部の同定した腸内細菌またはその近縁種のゲノムに、当該糖鎖エリシター産生に関わることが推定される酵素がコードされていることが明らかになった。一方で、クサシロキヨトウより腸内細菌を分離したところ、分離した腸内細菌の一部が、当該エリシター構造を含む多糖を炭素源とする培地で生育することを明らかにした。現在までに、植物の昆虫食害認識において腸内細菌が影響することは多くの報告があるが、その分子メカニズムに迫る研究は限られていた。本研究により、腸内細菌の食害認識への関与の分子メカニズムの一端が示されると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、イネの食害認識に関わる植物由来エリシター産生において、クサシロキヨトウ腸内細菌がどのような役割を果たすか、分子メカニズムに関する多くの成果を得た。本研究の主要な目的の一つである「植食性昆虫の食害認識における腸内細菌の関与の解明」において、かなりの部分を達成したと考えている。一方で、イネの食害受容機構について、現在までに一定性の成果を得ているが、引き続き解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
イネの当該糖鎖の認識機構の理解に向けて、関与する受容体の同定むけた実験を行う。また、令和3年度より継続して行っている食害認識に関わるエリシターの解析として、吐き戻し液中の当該糖鎖の検出実験系を用いた解析を進める。また、応答解析としてリーフディスクや植物体を用いた解析を行う予定である。一方で、食害認識における昆虫腸内細菌の関与に関して、今回同定した菌種が他の昆虫の腸内細菌においてもみられるか、また、他の昆虫腸内細菌においても、当該糖鎖エリシター産生酵素を有しているかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
研究費をイネの当該糖鎖エリシター認識機構の解析、防御応答解析、および吐き戻し液中の当該糖鎖の検出系の構築に用いる分析試薬・分子生物学試薬および消耗品の購入に使用する。研究成果の発表および情報収集のための学会参加、研究打ち合わせを行うための旅費を手当てする。計画していた実験課題の一部を次年度に行うこととなり研究費の一部を繰り越すが、研究課題全体としは順調に進展しており、次年度も実験実施計画に従い研究を推進する。また、計画していた研究打ち合わせの一部を次年度に延期した。
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Research Products
(11 results)