2021 Fiscal Year Research-status Report
プロテインホスファターゼPP2Cεが制御する小胞体ダイナミクスの機構解明
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21K05508
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
荒井 斉祐 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30528261)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小胞体 / Ppm1L |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体の構造は、主にタンパク質合成に関与する粗面小胞体と呼ばれるリボソームが付着したシート構造と、酵素及び代謝産物の貯蔵場として機能するリボソームが付着していない滑面小胞体と呼ばれるチューブル構造からなる。この構造は、様々な細胞内外の環境に応じて劇的に変化し、そのダイナミクスの破綻は、小胞体の機能障害に直結する為、細胞死やそれに伴う種々の疾患発症に繋がる。本研究では、小胞体ダイナミクスにおいて、小胞体のチューブル構造の形成と伸長を制御する機構を解明する事を目的としている。 小胞体に局在するProtein Phosphatase, Mg2+/ Mn2+ Dependent 1L (Ppm1L) が、小胞体上でpunctaを形成し、そこからチューブ構造が形成される事を見出した事から、本研究では、Ppm1Lを対象とした解析を行った。CRISPR-Cas9の系によりPpm1L KO株を樹立し、Ppm1L KOによりERの構造がどの様に変化するのかライブイメージングにより検討した結果、野生株と比較して、シート構造の割合が大きく減少した事から、Ppm1Lが、小胞体の形態に関与する可能性が考えられた。 Protein PhosphataseであるPpm1Lのターゲット分子は、リン酸化プロテオミクスを用いた解析により同定を試みた。野生株とPpm1L KO株を比較し、KO株においてリン酸化されたタンパク質量が上昇した149種類の分子を同定、その候補の中から小胞体タンパク質に焦点を当てた解析を試みた。その中の1つreticulon-likeタンパク質であるArl6IP1は、その過剰発現はチューブル構造の安定化を促進し、KO株ではシート構造が増加する事を見出した。これらの結果から、Ppm1LによりArl6IP1のリン酸化状態が変化する事で、小胞体の形態が変化する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン酸化プロテオミクスを用いた解析により同定したPpm1Lのターゲット候補分子であるArl6IP1の過剰発現およびノックアウトにより、小胞体のダイナミクスが大きく変化する事を見出し、Ppm1LとArl6IP1の関与が強く示唆されている。
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Strategy for Future Research Activity |
生化学的な手法を用いて、Ppm1LによりArl6IP1のリン酸化状態を変化させる事が可能であるのか検討する。また、他のターゲット候補分子に関しても解析を開始し、Ppm1LとArl6IP1の関係性が否定された場合においても、研究推進が停滞しない様に努める。
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Causes of Carryover |
様々な条件下で、複数回リン酸化プロテオミクスを行う予定であったが、予想に反し、1回目において、多数の候補分子が獲得できた為、リン酸化プロテオミクスにかかる費用が大きく減少した。リン酸化プロテオミクスに関しては、次年度以降に行う為、繰り越し分は、これに当てる予定である。 また、旅費に関しては、新型コロナ感染症の影響により、現地に行く事が無かった為、経費が0であった。
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Research Products
(1 results)