2021 Fiscal Year Research-status Report
比較ゲノミクスから探る育種モデル食用菌の生殖成長相転換機構の全容解明
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21K05530
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
種坂 英次 近畿大学, 農学部, 教授 (80188391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
築山 拓司 近畿大学, 農学部, 准教授 (00423004)
白澤 健太 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 主任研究員 (60527026)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子実体形成不全株 / 子実体形成関連遺伝子 / 低温刺激 / 発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
菌床培地において、正常株nは全ての栽培瓶で子実体を形成した。変異株d3とd4は一部の栽培瓶で菌床表面の一部のみから子実体を形成したことから、両株は子実体形成に関して極めて不安定であるものの、完全な子実体形成不能ではないと判断した。一方、変異株d5は菌床面に子実体原基の様な凹凸は観察されたが、それ以上の分化はみられなかったことから、完全な子実体形成不能株であると判断した。フラスコ内のMYS液体培地において、正常株nでは25℃で培養した栄養菌糸体を15℃の低温下に培養温度を変更することで子実体を形成したが、変異株d3、d4、d5では低温下でも子実体は形成されなかった。 RNA-seq解析において、エノキタケの子実体形成期に特異的に発現することが知られているFDS遺伝子やエノキタケを含む数種の菌類でも子実体形成期に発現するhyd1遺伝子が、低温刺激を与えた正常株でのみ誘導される遺伝子としてピックアップされた。RT-qPCRによる子実体形成関連遺伝子の発現解析において、Fvhyd1遺伝子とFvFDS1遺伝子は低温刺激を与えた、変異株d3、d4では発現せず、正常株nの原基形成期に特異的に発現していた。しかし、低温刺激を与えた、変異株d5では両遺伝子の発現が確認されたことから、この2つの遺伝子は子実体原基形成において、必要条件であるが十分条件では無いと考えられた。また、両遺伝子の発現はすべての菌株で連動していたことから、これらの発現を制御する共通の転写調節因子の存在が考えられる。本研究によって、これまで野生株を用いた子実体形成期に発現すると観察されていたFDS1やhyd1遺伝子の特性が、子実体形成不全株を用いることで、より明確に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた複核菌株の共役核の分割には成功したが、変異核の同定には至らず、正常核と変異核のゲノム比較は実施できなかった。しかしながら、正常株と変異株のRNA-seq解析およびリアルタイムPCRの結果から、子実体形成に関わる主要な遺伝子を特定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
共役核の分割と再構成複核菌株の表現型から変異核を同定する。正常核と変異核のゲノム比較から、変異箇所を同定する。さらに、低頻度に子実体を形成した変異株(d3とd4)から担子胞子を採取した。得られた担子胞子由来の単核系統群の群内交配(自殖)および正常株との群間交配から多数の複株菌株を作出し、正常株群および子実体形成不全株群のRAD-seq解析を実施する。一方、野生株HY由来の単核系統群のうち単核性発茸を示す系統群についてUV照射による変異誘発を実施した。これらのUV照射系統群の発茸特性を比較し、RAD-seq解析に供する。
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Causes of Carryover |
令和3年度当初に予定していた正常核と変異核の比較ゲノミクスに至らなかったため。令和4年度は本解析に加えて変異株群のRAD-seq解析を含めて実施する。
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Research Products
(1 results)