2022 Fiscal Year Research-status Report
高温前処理によるイネメソコチル伸長の制御メカニズムの解明と栽培への応用
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21K05539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 哲司 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30231913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹山 大輔 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20554249)
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メソコチル伸長 / エクスパンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
インディカ品種Kasalathとジャポニカ品種日本晴を用いて,14時間給水させた種子を40℃で14日間の高温前処理を行い,その後暗所30℃で10日間生育させた。Kasalashでは処理しないメソコチルの長さは約30 mmであったのに対し処理により約120 mmにまで伸長し,日本晴では約5mmが約80mmにまで伸長した。Kasalathの伸長中のメソコチルにおいて,細胞壁の酸による伸展性を測定したところ,高温前処理により約30%の酸による伸展性の増加を観察した。 次に,両品種の実生において,メソコチル上部1 cmの部位から細胞壁タンパク質を抽出しエクスパンシン活性を調査した。両品種とも高温前処理によりコントールに比べて抽出タンパク質当りのエクスパンシン活性に変化は見られなかったが,高温前処理によりこの部位のタンパク質量は30から40%増加していたことより,エクスパンシン量は高温前処理により増加することが示された。また,この部位における細胞壁のエクスパンシンに対する反応性を,熱失活させた細胞壁にエクスパンシンを与えることで調査した結果,有意に増大していることがわかった。 次に,イネに存在する26のαエクスパンシン(EXPA) 遺伝子,14のβエクスパンシン (EXPB) 遺伝子,3種類のエクスパンシンlike A (EXLA)遺伝子,1種類のエクスパンシンlike B (EXLB)遺伝子の発現量を調べたところ,Kasalathにおいて2種類のEXPAが高温前処理により発現量が増大し,日本晴においては3種類のEXPA,3種類のEXPB,1種類のEXLA発現量が増大した。それゆえ,高温前処理により増加すると考えられるエクスパンシン量は,これらの種類のエクスパンシン遺伝子の発現増加が関与しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画では,1)高温前処理により誘導されるシグナルとその伝達経路の同定,2) α-アミラーゼによる可溶性糖供給の関与の研究,3)エクスパンシンに関する研究,4) 高温前処理の実用化への研究の4つの実験を計画した。現段階で,1)と4)の研究の大半を終え,3)に関しては生理学的研究によりエクスパンシン関与を明らかにし,関与するエクスパンシンの種類を特定が終了した。以上のことから,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,高温前処理によるメソコチル伸長促進において,細胞伸長の面から細胞壁が伸びやすくなっていることを明らかにした。細胞が実際に伸長するためには,伸びやすくなっている細胞壁を伸ばすために細胞の浸透調節と細胞壁の素材となる物質の供給が必要となる。その観点から今後は,胚乳からメソコチルへの可溶性糖供給に及ぼす高温前処理による影響とそれに関与する酵素の活性と遺伝子発現量を調査する。
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Causes of Carryover |
データの取りまとめが学会発表までに間に合わなかったため,学会発表ができず次年度使用額が生じた。翌年度に学会発表し使用する予定である。
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