2023 Fiscal Year Research-status Report
高温前処理によるイネメソコチル伸長の制御メカニズムの解明と栽培への応用
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21K05539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 哲司 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30231913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹山 大輔 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20554249)
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メソコチル伸長 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温前処理によるイネメソコチルの伸長誘導メカニズムを解明するため,ジベレリン (GA) が関係すると考えられている発芽時の胚乳デンプンの分解と可溶性糖の供給,デンプン分解酵素の活性と遺伝子発現の差異について,前処理をおこなっていない種子 (無処理種子),高温前処理をおこなった種子 (高温前処理種子),常温前処理をおこなった種子 (常温前処理種子) を供試して調査した。 無処理種子,高温前処理種子,常温前処理種子を半切して胚の無い側を水に浸け,胚乳から流出した全糖濃度を測定したところ,高温前処理によって胚への糖供給が著しく増大することが明らかとなった。したがって高温前処理によるメソコチル伸長促進には,高温に応答する因子による糖供給の増大が大きく寄与していることが考えられる。種子の吸水に関連したプロセスが高温前処理による胚への糖供給の増大ひいてはメソコチル伸長促進に関与している可能性がある。 次に処理中の種子あるいは発芽種子から胚乳部分をサンプリングし,デンプン分解酵素の活性を測定した。その結果,β-アミラーゼ活性が高温前処理種子で有意に高いことが明らかとなった。また高温前処理を施すことでいくつかのβ-アミラーゼ遺伝子で発現の上昇が確認された。しかしながらα-アミラーゼの活性および遺伝子の発現の増大は認められなかった。さらにGA活性化遺伝子とエクスパンシン遺伝子のメソコチルにおける発現を解析したところ,高温前処理実生でそれらの遺伝子のいくつかが有意に高い発現をすることを明らかにした。 以上のことから,高温前処理によってβ-アミラーゼが誘導され,活性が増加することで胚への糖供給が増大し,その糖をエネルギー源としてGAによる成長促進に利用,あるいはエクスパンシンによる細胞肥大のための浸透調節に利用したことで,メソコチルの伸長促進が誘導される可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画では,1)高温前処理により誘導されるシグナルとその伝達経路の同定,2) α-アミラーゼによる可溶性糖供給の関与の研究,3)エクスパンシン に関する研究,4) 高温前処理の実用化への研究の4つの実験を計画した。現段階で,1)から3)の研究の大半を終えた。4)に関してはこの一年で残りの研究を行う予定である。以上のことから,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
節間形成導遺伝子ACE1およびACE-LIKE1 (ACL1) とACL1の働きを抑制する遺伝子DECELERATOR OF INTERNODE ELONGATION1 (DEC1) が高温前処理により誘導されるメソコチル 伸長に関与しているかどうを調査する。さらに,ジャスモン酸の関与をさらに研究する予定である。
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Causes of Carryover |
いくつかの遺伝子の発現解析を次年度行うことに変更したために次年度使用額が生じた。
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