2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of weather damage resistance in rice using 3D image analysis and simple wind tunnels
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21K05540
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 和広 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (90234814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 作物の気象災害 / 開花 / 深度合成 / 簡易型風洞 / 風速 |
Outline of Annual Research Achievements |
簡易型風洞内に矮性イネと3D画像解析で設計した模擬構造を導入し,模擬群落を再現し,乱流も含めた気流の流れをハイスピードカメラで可視化することによって,微気象の影響を明らかにすることを目的として,当年は簡易型風洞の作成とそれの性能を評価した.さらに圃場に近い状態の模擬環境において高温,熱風害や潮風害などの気象災害を再現する方法の一つとして,イネ植物体といっしょに微気象を操作し,解析するために模擬群落を簡易型風洞に導入する準備を行った.簡易型風洞では12m/sまでの風速を安定的に稲体に向けて与えることができた.群落の外に吹く風のおよそ1/3程度の風速が群落内部に吹くと想定されるので,標準レベルの台風までであれば,穂や風に当たる風を再現できると考えられる.この風洞で風がイネの開花時刻に与える影響を解析した.イネの開花時刻は開花期高温障害を始め,開花期に起こる気象災害(潮風害,フェーン)において大きな影響がある要因であるその結果,大黒における50%開花時刻において,風速が3m/sになるまでは開花時刻は少し早くなり,風速が3m/sを超すと開花時刻は遅くなり,特に9m/sを超すと急激に遅くなった.雷雨のあった日には開花時刻が遅くなる傾向があったので,その結果を除去すると風速と50%開花時刻の関係は2次曲線で示された.2次曲線の式から最も開花が早くなる風速は3.52m/sとなった.天気によっても開花時刻が異なることから,大黒以外の供試品種もまとめて,晴れ,曇り,雨の3種類で,風速と開花時刻の関係を調べたところ,どの天気でも2次曲線の関係を得ることができ,晴れの日の開花時刻が早くなる傾向がみられた.開花撮影についてはレンズにルーペ接続したデジカメと深度合成の組合せで、ピントの合う範囲は狭くなるが,花器内(葯、柱頭、花粉など)にピントが合った精細な拡大画像を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の目標は1)簡易型風洞に導入する作物群落構造の作成,2)簡易型風洞における微気象条件の拡大であった.1)の模擬構造については今年度は穂の3次元画像の作成と3Dプリンターでの作成まで進めたものの,群落という形にするまでには至らなかった.一方,大黒という品種は短稈であり,多数をいちどに風洞内に入れることができるので,実際の植物を使った模擬群落構造を作ることが可能ではないかということに至った.2)簡易型風洞における微気象条件の拡大については風速を安定的に12m/sまで与えることができるようになり,2022年度以降に予定している高温,潮風害,フェーン,強風害などの実験を進めることが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
可視化風洞による風速処理実験が可能となったので,予定通り,以下の3つの実験を開始する.① 開花期における高温障害として, 35℃以上の高温下にある風洞内に開花期のイネを搬入し,風の温度,湿度,速度などを種々に設定して,穂に吹き与えることによって,風が高温障害にどのように関与しているかを明らかにする.② 開花,出穂期における熱風害(フェーン害)の研究として,風洞内においてフェーン現象で発生する熱風を再現し,穂周辺の気流を含めた微気象と白穂発生の関係を調査する.③ 出穂期から登熟期における潮風害の研究として,作成した風洞内において台風の強風によって発生する潮風害を再現し,穂周辺の気流を含めた微気象と白穂発生の関係を調査する.人工海水をスプレーで風洞内部から散布することによって,潮風害を再現する.模擬群落構造の作成を今年も挑戦する.今年は,大黒という品種は短稈であり,多数をいちどに風洞内に入れることができるので,実際の植物を使った模擬群落構造を作ることが可能ではないかということにいたったので,2022年度では3Dプリンターによる模擬群落構造だけでなく,短稈品種である大黒による模擬群落構造も試みる予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)購入計画じたいはほぼ順調に実施して,実験を進めていったが,消耗品の購入において,少しだけ予定より少なくなったために,少しだけ予算が残ることになった.これは不測の事態に備えたということもある.このため,次年度使用が生じた. (使用計画)今年度も消耗品を購入する計画であり,また実験装置の保守にも補充が必要なので,ほぼ予定通りに予算を使用できる予定である.
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