2022 Fiscal Year Research-status Report
ヤムイモ類における沈降性アミロプラストを起点とする塊茎形状成立機構の理解深化
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21K05547
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
川崎 通夫 摂南大学, 農学部, 教授 (30343213)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヤムイモ塊茎 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者はナガイモや自然薯などの塊茎頂端部に重力方向へ沈降するアミロプラスト(澱粉粒を蓄積した細胞小器官)が局在することを見出し、このアミロプラストが塊茎の形状成立に関与している可能性を報告した。本研究は、根ではないヤムイモ類の塊茎における形状成立機構の解明を目的とし、塊茎形状成立における(1)沈降性アミロプラストの役割と(2)オーキシンの関与を明確化し、更に(3)アミロプラスト沈降の制御やシグナル伝達の仕組みも調査するものである。令和4年度においては、沈降性アミロプラスト-塊茎形状間の関係性の明確化においては、新手法である「切片SEM法」を本実験において多く用い、塊茎頂端部において物理的アーティファクトを極めて低減させて微細構造像に関する良好なデータを得ることが可能となった。この手法を利用して、ヤムイモ類における形の異なる塊茎の比較観察も進め、塊茎の重力感受・屈性および形成機構の理解につながる知見が得られた。また、塊茎形成とオーキシンの関わりではオーキシン測定を試行し、塊茎形状成立に関わるアミロプラストの沈降制御とシグナル伝達の仕組みについては、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、塊茎における主にアクチンフィラメントを良好に観察するこことができ、沈降性アミロプラストとアクチンフィラメントとの関係性について検討を深めている。また、異なる形状の塊茎間における塊茎内のCa分布様式を急速凍結-真空凍結乾燥試料を用いたSEM観察下でのエネルギー分散型X線分析法を用いて解析し、その結果を国際学会で発表した。以上のデータは、ヤムイモ類の塊茎における重力感受・屈性と形状成立機構を理解を深める上で意義であるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切片SEM法の導入・適用により、デンプン粒を多量に含む塊茎においても良好な内部切片画像が得られ、沈降性アミロプラスト-塊茎形状間の関係性に関する検討が進められた。また、塊茎形状成立に関わるアミロプラストの沈降制御とシグナル伝達の仕組みについては、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、塊茎における主にアクチンフィラメントを良好に観察することが可能となり、沈降性アミロプラストとアクチンフィラメントとの関係性の検討を進めることができた。しかし、特にオーキシンと塊茎形状成立との関係性の確認については、再現性の高いデータを得られにくく、検討を更に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては、オーキシンと塊茎形状成立との関係性の確認を進める。ここでは外生・内生オーキシンと塊茎形状成立との関係性について、形態調査と平行しながらガスクロマトグラフィー法なども新たに取り入れて解析を進めていく。また、重力刺激処理した塊茎や異なる形状の塊茎を供試して、塊茎の形成と重力感受・屈性の仕組みとアクチンフィラメントとの関係性やPIN遺伝子などの発現量、Ca動態などについて、共焦点レーザー走査型顕微鏡法およびその他の分析手法を用いて更に研究を進める。
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