2021 Fiscal Year Research-status Report
ダイズに共生した複数の根粒菌種の根粒窒素固定活性の菌種間差とその特性について
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21K05548
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
前川 富也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 主任研究員 (40409090)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ダイズ / 根粒窒素固定活性 / 根粒菌 / 根粒菌菌種間差 / 温度依存性 / 非破壊的窒素固定測定法 / 作物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイズの根粒窒素固定活性(ARA:アセチレン還元活性)は、様々なストレス(地温、土壌水分、ダイズの生育 等)による影響を受けるが、ダイズと根粒菌種の組み合わせや土壌中の多様性に富んだ土着根粒菌の影響も受ける。しかしながら、根粒菌の窒素固定活性に関する菌種間差の報告は非常に少なく、単一の根粒菌種を接種して評価した報告が多い。 そこで、研究代表者は栽培現場により近い状況の各根粒菌種の窒素固定活性を評価するために、同一個体に2種類の根粒菌種が共生しているダイズの根粒窒素固定活性を測定し、菌種間差を同時かつ個別に測定すること、その根粒菌の特性の1つである温度依存性を探ることを目的として研究を進めてきた。 研究代表者は、先行研究として、3種類の根粒菌種(USDA110、USDA6、USDA31)のうち2種類の根粒菌を独自に開発した根分け法の実験系の各区画に個別に接種し、全ての組み合わせで窒素固定活性を測定した。その結果、異なる2種類の根粒菌を感染させた状況下での窒素固定活性に菌種間差があることがわかってきている。そこで、さらに2つの別の根粒菌USDA94とUSDA123を加えた全パターンの調査を進めた。これらの選択した5つの根粒菌は、日本の土壌の南北にそれなりに分布し、かつ特徴が異なる根粒菌を選んだ。 R3年度は、USDA94の全パターンとUSDA123の一部を調査した。R3年度の試験の結果、USDA94はUSDA110の次に高い窒素固定活性を示した。植物体あたりの窒素固定活性は、おおよそUSDA110:USDA6:USDA31:USDA94=3.23:1:1.61:2.61となった。 以上のことから、異なる2種類の根粒菌を感染させた状況下での窒素固定活性に菌種間差があることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度の根粒窒素固定活性の測定に関しては、実験の設備・測定システム 等問題なく使用できていたので、計画的に実験を進めることができた。 ただし、R3度の栽培試験・根粒窒素固定活性の測定後に、使用していた温室の冷房設備が故障し、業者に修理を依頼したが様々な理由で人工気象室の修理が不可と判断された。現在は他の研究者が使用している隣接した人工気象室で生育期間を区切っての一時的な兼用状態の使用となったため、今後のダイズの年間の栽培回数(実験回数)の減少が予想され、進展に関しては、遅れていくと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の研究計画は、選択した5つの根粒菌の全てのパターンの根粒窒素固定活性の測定を進めることを予定している。人工気象室が故障したため、栽培回数(実験回数)が減少することが予想されるので、先行すべき予備的な試験に時間を割いて取り組んでいくことが不可能になるが、次年度に関しては問題なく試験できる予定である。 R4年度から、研究代表者が人事異動により、研究推進室の業務との兼任になったため、研究にかけられる時間が減少することと人工気象室の故障により、栽培回数(実験回数)が減少することが予想されるため、研究計画の変更は多少遅れることが予想される。また、人工気象室に関しては、今後は室内の人工気象機により代用することで対応を予定している。 そのため、大まかな計画には問題ないと考えている。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況・理由: 次年度使用額が生じた状況・理由は、研究費の効率的な使用をして発生した残額である。また、R3年度の途中に故障した人工気象室の修理に使用できないかと検討していたが、修理不可となったため、その分の残額の一部が次年度使用額として発生した。
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画: 次年度使用額 96361円は、実験の再現性の精度を向上させるためのポットの数を増やす経費に使用することを計画している。次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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