2021 Fiscal Year Research-status Report
High temperature resistance mechanism of Japonica rice that dramatically improve the quality of brown rice under high temperature ripening
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21K05554
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Research Institution | Fukuoka Agricultural and Forestry Research Center |
Principal Investigator |
宮原 克典 福岡県農林業総合試験場, 豊前分場, 研究員 (80557033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
内川 修 福岡県農林業総合試験場, 農産部, チーム長 (50502465)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水稲 / 高温 / 品質 / 外観 / 遺伝子 / 農業形質 / 高温耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
水稲品種「元気つくし」が有する高温耐性の仕組みを明らかにするために、「元気つくし」の交配親品種である「つくしろまん」と、背白粒の発生に関与するQTLを「元気つくし」型で有する準同質遺伝子系統「GT-NIL01」、「GT-NIL05」を供試して研究を行った。 通常栽培条件下において、「GT-NIL01」と「GT-NIL05」の農業形質に「つくしろまん」との有意な差は認められず、両準同質遺伝子系統が「つくしろまん」と同質であることが確認された。また、通常栽培条件の下では、両準同質遺伝子系統の背白粒発生率は、「元気つくし」と「つくしろまん」の中間的な値を示した。太宰府アメダスの記録では、出穂後20日の平均気温は26.8~9℃と未熟粒が発生率が上がるとされる27℃より低かった。通常栽培条件において、稈長、穂長、穂数、出穂期、子実重、千粒重といった項目で、準同質遺伝子系統と「つくしろまん」との同質性が確認され、外観品質においては「つくしろまん」と「元気つくし」の中間的な値を示したことから、稈長、穂長、穂数、出穂期、子実重、千粒重の影響に依らず、背白粒の発生が変化していることが示唆された。 ファイトトロンを用いて行った高温処理実験では、両準同質遺伝子系統の背白粒発生率は「つくしろまん」に比べ有意に低く、QTLの背白粒発生を抑制する効果が確認された。RNA-seq による準同質遺伝子系統の遺伝子発現解析では、第8染色体を中心に「つくしろまん」と異なる発現パターンを示す遺伝子が確認されており、さらに「元気つくし」の発現パターンに一致する遺伝子も複数検出された。 今後は、これらの遺伝子の働きを調べることにより、どのような機構により背白粒の発生が抑制されているのかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常栽培による農業形質の確認と高温栽培による外観品質の評価と遺伝子発現について、当初計画通り実施された。 作況試験などを毎年実施し、農業形質の評価を行う技術や知見を豊富に持つ福岡農林試の貢献により、供試系統の持つ農業形質について、計画通り評価を行うことが出来た。供試した準同質遺伝子系統の農業形質は、反復親品種の形質を概ね引き継いでいた。玄米外観品質については、遺伝子供与親品種の形質と反復親の形質の中間的な品質となり、準同質遺伝子系統として期待される形質を示した。 さらに、ファイトトロンを用いた高温処理を行う技術および知見を持つ九州大学と共同で試験を実施したことにより、高温条件下における玄米品質の評価を実施することが出来た。想定したように、高温条件下において、準同質遺伝子系統の外観品質は向上し、第8染色体上の遺伝領域が高温登熟耐性に寄与するおとを示唆するデータを得ることが出来た。ファイトトロンで高温登熟期間中にサンプリングした子実における遺伝子発現解析を現在実施中であり、今後さらなる解析を進めたい。 上記のように、現在のところ順調に研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、通常栽培条件における農業形質について、年次変動を確認するため、再度福岡農林試において通常栽培を実施し、準同質遺伝子系統の同質性の再現性を確認する。また、ファイトトロンで得られたサンプルを用いて、高温処理による遺伝子発現解析を進めることで、遺伝子発現と高温による背白粒の発生との関係をさらに解析する。また、ファイトトロンで得られた登熟中の子実を用いて、背白粒の発生時に生じる胚乳の構造変化を観察することで、それぞれの供試系統にどのような差異が存在し、高温登熟耐性に繋がっているのかを評価する。さらに、高温による遺伝子発現と、登熟期間中の胚乳における変化、背白粒の発生の関係を評価し、高温による品質の変化がどのような機構でもたらされるのかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現解析に用いる試薬を購入する計画としていたが、在庫の活用が出来たことから、新規の購入を控えた。使用しなかった助成金については、次年度の助成金と合わせ、追加の遺伝子発現解析に活用する計画としている。
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