2022 Fiscal Year Research-status Report
Reversible, diurnal red shift of corolla color in blue cultivars of Phlox paniculata (Polemoniaceae)
Project/Area Number |
21K05559
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
國分 尚 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (20282452)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 花冠pH / アントシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
クサキョウチクトウの青色品種7品種、赤色品種3品種、白色品種3品種を用い、無加温ビニルハウスと温度17℃・明条件(PAR 10μmol/m2/s)に設定した人工気象器で花冠pH値の比較を行った。無加温ビニルハウスでの花色と花冠pHは時刻によって変化したが、環境が一定である人工気象器での花色と花冠pHは一定であった。従って、青色品種の可逆的花色変化は概日リズムによらないことがわかった。 また、人工気象室の温度を17、20、25、30℃の4水準、光条件を明条件と暗条件の2水準とし、植物体搬入3時間後に花色と花冠pHを比較したところ、青色品種の環境応答は3つのタイプに分かれた。(1)光が要因、(2)光と温度が要因、(3)光と温度が要因で相乗効果がある。花冠pHの変化もこの3つのタイプにわかれた。赤色品種、白色品種も花色は目視では変化しないが花冠pH値は変動し、赤花品種では青花の最低値よりも低い範囲で変動していた。可逆的花色変化は概日リズムによらないことから、その場の環境に影響をうけ、花色が変化することが示唆された。青色品種だけでなく、赤色品種や白色品種でも花冠pHが変動していることからクサキョウチクトウがもつ性質として環境により花冠pH値が変動し、青花は高pHの範囲で変化することによってアントシアニンによる花色が変化することが示唆された。花色と花冠pHは環境によって同パターンで変化をしていたが、品種によっては花色と花冠pH値の変化が一致しないものがあった。この特殊な例では花冠pH以外のものも花色に影響していると示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験で示唆されていた品種館での環境応答反応の違いが温度の水準を増やした実験によって確認され、類型化できた。このことにより、次の段階である、pH関連遺伝子の発現調査を行うための環境の設定と使用すべき品種が明らかになり、今年度の研究が滞りなく行える条件が整ったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
pH関連遺伝子の発現解析を行い、色が変化する環境条件で経時的に発現を調べることで色変化の機構を推定する。 まず、近縁種の水素イオントランスポーターをはじめとするpH関連遺伝子を検索し、保存領域を利用してクサキョウチクトウの相同遺伝子をクローニングし、花冠での発現および実際の花色との相関を確認する。また、次世代シーケンサーを用いてpH関連遺伝子だけでなく、発現調節遺伝子に関する知見を得ることを試みる。これらにより環境条件によってクサキョウチクトウ花冠で起きている遺伝子発現ネットワークの一端を理解する。
|
Causes of Carryover |
温室を整備したことにより、株の生育が良く、想定していた株数の半数で実験が行えたため、予定していた栽培用資材よりも少なく済んだため。余剰分については遺伝子発現実験のサンプル数を増やすことに使用する予定である。
|