2021 Fiscal Year Research-status Report
花被片の展開を制御するジャスモン酸合成の多様性の理解と八重咲き花育種への展開
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21K05563
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
北村 嘉邦 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (90578139)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャスモン酸 / 花被片 / ユリ / 花器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,ユリの花被片の展開着色を制御するジャスモン酸(JA)が合成される花器官の品種間差を明らかにすることを試みた.予備調査から,JAが合成される花器官の候補として,雄蕊および心皮が考えられた.そこで,花蕾の時点で雄蕊を除去する処理区,心皮を除去する処理区を設け,花器官の除去後の花被片の展開と着色の有無を調査した.広範のユリの園芸品種および原種について調査することを目的として,アジアティックハイブリッドを7品種,オリエンタルハイブリッドを6品種,トランペットリリーを2品種,ロンギフローラムアジアティックを2品種,ロンギフローラムオリエンタルを2品種の計19品種のユリの園芸品種および原種を用い,各処理区ともn = 3を確保した. いずれの品種についても心皮除去処理区では花被片の展開と着色が認められた.一方で,雄蕊除去処理区では,7品種で花被片の展開と着色が起こらなかった.また,12品種では花蕾が枯死した.雄蕊除去処理区での花蕾の枯死はアジアティックハイブリッド品種で特に多く認められ,雄蕊除去処理区で花蕾の生存を認めたのは‘ホワイトピクセル’のみであった.アジアティックハイブリッドでは,傷害誘導性のエチレン反応が起こりやすいと報告されているため,続けてSTS処理による実験の効率化を検討した. 花器官除去処理終了時に,5mMのSTSを処理することで傷害誘導性のエチレン反応を抑制し,花器官除去処理した花蕾の生存率を高めることが可能か検討した.その結果,アジアティックハイブリッドでも花器官除去処理後の花蕾の生存率を高めることが可能になった. 雄蕊除去処理およびSTS処理により展開・着色しなくなった花被片にMeJAを散布し,花被片が展開・着色するか確認した.その結果,MeJA処理した花蕾では花被片の展開・着色が起こった.以上から,ユリでは雄蕊でJAを合成することが強く示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユリの花器官のうち,ジャスモン酸を合成する花器官を雄蕊としてほぼ特定することができた.当初の仮説では,ユリの品種間で,ジャスモン酸を合成する花器官に違いがあると想定していた.一方で今年度の調査では,ジャスモン酸を合成する花器官は雄蕊であり,ユリの品種間で違いがないことが強く示唆された. 以上の結果については,花器官毎のジャスモン酸含量を含めてさらにデータを蓄積する必要がある.一方で,複数のモデル植物で論じられている,花器官によるジャスモン酸合成活性の違いが,器官のアイデンティティーによって制御されている訳ではない可能性が示唆されている.今後は,この点についてデータをさらに集める. 当初の仮説とは異なるものの,学問的には興味深い知見が得られていることから,進捗区分は上記の通りに判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果について,ジャスモン酸合成関連遺伝子群やジャスモン酸トランスポーター遺伝子群を含めた発現解析と,ジャスモン酸含量分析によって裏付ける.また,八重咲きユリ品種を用いて花器官除去実験を行い,花器官のアイデンティティーとジャスモン酸合成との関係について詳細に調査する.
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Research Products
(1 results)