2023 Fiscal Year Research-status Report
施設栽培における14C/12C比を利用したCO2施用効率の解明
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21K05573
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 克己 静岡大学, 農学部, 教授 (70370575)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バイオベースC / 光合成 / グロースチャンバ― / 安定同位体 / 化石燃料由来C率 / CO2施用 / トマト / 施設園芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
温室内で施用したCO2がどれだけが植物によって利用されるかは不明であった。 ASTM D6866-21方法を使用すると、物質内の有機物由来のバイオベース炭素 (C) の割合を求めることがきる。 そのため100からバイオベースC(%)を引くと、化石燃料由来C率(FDCR)を求めることができる。本研究では、CO2施用温室内でトマトのFDCRを測定した。 トマトをCO2ガスボンベを使用してCO2施用したグロースチャンバー(GC)内と、冬に灯油燃焼式CO2施用の温室内で栽培した。 ボンベのCO2のFDCRは100%であったが、GC内で栽培したトマトのFDCRは約 60%であった。露地トマトの場合は2%程度だった。今回GCで栽培したトマトは、ボンベからのCO2を約60%、外気からのCO2を40%の割合で使用していることが分かった。 露地の外気中での栽培日数と、GCの栽培日数を変化させた場合、植物のFDCRと各期間の比率との間には正の相関が認められた。よって、FDCRは化石燃料由来のCO2と外気由来のCO2の割合を正確に測定できると考えられた。CO2施用した温室で、1週間毎に出現したトマトの側芽を分析した。 環境データを使用し、シミュレーションソフトウェアを使用して、全期間に対するCO2施用期間中の光合成の割合(PPCO2)を計算した。サンプリング1 ~ 8日前のPPCO2と側枝のFDCRと正の相関を示した。約 600ppm(PPCO2=100%)の条件で出現した側芽のFDCRは約35%であったため、生体内のCの65%は外気中のCO2に由来すると判断された。これは、CO2施用時に換気などにより、外気からCO2が流入したためと考えらた。FDCRを求めることで、CO2施用により吸収される化石燃料の量を明らかにすることができ、CO2施用の効率化に役立つと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グロースチャンバ―およびCO2施用を行った温室で栽培したトマトの化石燃料由来C率を調査する実験については、有用なデータを得ることができた。学会発表を2課題行うとともに、論文としてまとめ、既に公表済である。計画していたCO2局所施用試験は、局所施用の設定が難しかったため、課題期間を1年間延長し、次年度も再度行う予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
土耕ハウスにおいてCO2施用した場合の化石燃料由来C率の結果について、秋の学会で発表予定である。また、夏季栽培でのCO2施用の効果と、冬季におけるCO2局所施用の効果については、次年度、研究期間を延長することで対応することにしている。
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Causes of Carryover |
本年度、CO2局所施用により、CO2利用率が向上するか試験を行う予定であったが、環境制御機器等の不具合により、十分な結果を得ることができなかった。そこで、研究期間を1年間延長し、次年度、CO2局所施用実験を行うこととしたため、本年度使用予定だった消耗品経費、分析経費、その成果の発表のための旅費、人件費等を次年度に使用できるよう計画を変更した。また土耕試験の結果のまとめが遅れ、学会発表ができなかったため、次年度、これまでの土耕栽培のハウスのデータをまとめて、秋に開催される園芸学会にて発表を行う予定であり、旅費として使用する。実験が不十分であるCO2局所施用の効果について、夏季と冬季に試験を行い、春の学会で発表を予定している。それに関わる経費を次年度使用予定である。
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