2022 Fiscal Year Research-status Report
トウガラシにおいて高温下での着果性を決定づける2遺伝子座の特定
Project/Area Number |
21K05575
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山崎 彬 近畿大学, 農学部, 助教 (90895418)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | トウガラシ / 着果不良 / 花粉発芽率 / 高温ストレス / 地球温暖化 / 施設園芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温下における植物の着果に対する強い悪影響は、気温上昇が進行すると予測される現代において我々が対処すべき大きな課題であり、様々な植物種において注目されるテーマの一つである。トウガラシにおいても高温下で着果促進処理を行わずとも安定的に着果する品種が切望されている.本年度は、高温着果性と関連する2つの遺伝子領域(第6染色体上および第3染色体上)のうち、第3染色体の遺伝子領域について交雑集団を作成し,自動着果率および花粉発芽率の2形質を利用し原因遺伝子の絞り込みに取り組んだ.また多数の個体の花粉発芽率を効率的に解析する手段として深層学習が有用であると考え、画像解析によって形質調査を迅速に行う簡易測定法を確立して実験に取り組んだ。しかし、実験に用いたいずれの分離集団においても遺伝子型間に高温下での自動着果率および花粉発芽率に差異が認められなかった。これまでの研究をもとに第3染色体上の遺伝子が高温着果性をもたらすと考えていたが、実験に供試したF5-RILs系統ではその遺伝子のソースであるF1雑種ほどの高温着果性が発現しなかった。F1雑種の自殖を繰り返して作成した後代において第3染色体上の候補遺伝子の効果が小さく、現行の手法でのファインマッピングによる遺伝子の特定が困難であると結論づけた。そのため、高温下の自動着果性と関連の深い花粉発芽率を左右する要因に焦点を当て、実験を継続した。花粉発達中の組織観察を行い、高温障害に関わる花粉発達ステージを決定した。そして高温下でその花粉発達ステージの花粉および葯の組織からRNAを抽出し、RNA-seqを実施した。F1雑種とその親品種である’Sy-2’および’No. 3686’のRNA-seqデータが取得済みであり、解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度から所属機関を移動したが、実験に用いる栽培場所は確保できたために、実験を計画通り進めることができた。ただし、第3染色体に座乗する候補遺伝子領域のファインマッピングを試みた際に、実験に用いたいずれのF5-RILs系統においても遺伝子型間に高温下での自動着果率および花粉発芽率に差異が認められず、計画していた研究成果を得られなかった。一方で、高温下で花粉および葯の組織のRNA-seqは予定通り、実施できた。F1の親品種である’Sy-2’および’No. 3686’およびF1雑種のRNA-seqデータが取得済みであり、解析を進めているところである。以上から総合的に判断し、進捗状況はやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画されていた通り第6染色体の候補遺伝子領域についての研究に加え、本年度の結果を受けて花粉発達中のRNA-seq解析も実施する。第6染色体の遺伝子については、候補領域を狭めるとともに当該領域の遺伝的効果を検証する。候補遺伝子領域の遺伝子型が異なる系統間で形質調査を行い、高温下での自動着果性の改善に関連する形質を探索する。また2022年度に取得した高温下での花粉発達中の葯の遺伝子発現をRNA-seqのデータを利用して網羅的に解析する予定である。これらの情報からトウガラシの高温着果性に関わる候補遺伝子を絞り込み、推定する。
|
Causes of Carryover |
本年度のNGS解析に使用できたサンプル数が限られたことにより次世代シーケンス費用によって次年度使用額が生じた。次年度に追加サンプルを次世代シーケンス解析に供試予定であるため、繰越金を使用する。また学会発表をオンラインで行い旅費の使用が少なくなっているため、次年度に別学会等で成果発表の機会を設けるために計上する。
|